『約束』
- 2017/07/14(Fri) -
石田衣良 『約束』(角川文庫)、読了。

短編集。
優しいお話が詰まってます。

ちょっと優し過ぎかな。
最後にどんでん返しがあるのかなと思いきや、
意外とすんなり穏やかに終わっていく話が多いので、
ちょっと拍子抜け。
でも、人間の優しさを実感できる本なのかな。

個人的には、「天国のベル」という、
子どもの難聴障害を扱った作品が印象に残りました。
家族にのしかかる重たい問題に対して、息子が取った解決策。
リアリティがないと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、
しかし、彼の目の前に開けていた世界は、これしかなかったんだろうなという
納得感がずしーんとありました。

この短編集を通して、
人間、とんでもなく苦しい状況に追いやられることがあっても、
家族や友人や周囲の人に助けられて前を向ける瞬間があるんだなということが
じんわりと伝わってきました。


約束 (角川文庫)約束 (角川文庫)
石田 衣良

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『伊勢湾』
- 2017/07/13(Thu) -
海の博物館、石原義剛 『伊勢湾』(風媒社)、読了。

『伊勢湾』というタイトルと、「海の祭りと港の歴史」というサブタイトルから
「三重県の漁村文化の本だぁ~」と思い込んで買ってしまいましたが、
スタートは伊勢志摩の海からで、段々と北上し、伊勢湾最深部を回り込んで
知多半島、渥美半島と紹介が続く、まさに「伊勢湾文化」の本でした。

タイトル通りなのですが、勝手に三重県本だと思い込んでいた自分を反省。

しかし、伊勢志摩おリアス式海岸から、津の砂浜が広がる海岸から、
回船業の盛んな桑名まで、それぞれの土地土地の特徴が分かって面白かったです。

また、愛知県側の文化についても
意外と熊野信仰などと結びついていることが分かって
興味深かったです。

何よりも、著者自身が、それぞれの文化や祭りを自ら体験し、
「何が面白い」「何がユニーク」といった感想を
活き活きと綴っていることが素晴らしいと思いました。

単なるガイドブックではない、著者の思いの詰まった文化紹介本でした。


伊勢湾―海の祭りと港の歴史を歩く伊勢湾―海の祭りと港の歴史を歩く
石原 義剛 海の博物館

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『ジョークの哲学』
- 2017/07/12(Wed) -
加藤尚武 『ジョークの哲学』(講談社現代新書)、読了。

京大の先生がジョークについて解説した本。

ジョークはたくさん紹介されているのですが、
ジョークの面白さよりも、解説をしっかりすることに力点を置いているので、
面白さ半減です。

というか、解説に合うためのジョークを出してくるので、
たいして面白くないジョークも結構登場して、
乗り切れないまま読み終わってしまいました。

ジョークを語るなら、やっぱりジョークが主役じゃないと
面白くないですねぇ・・・・・当たり前のことですが。


ジョークの哲学 (講談社現代新書)ジョークの哲学 (講談社現代新書)
加藤 尚武

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『段取りの"段"はどこの"段"?』
- 2017/07/11(Tue) -
荒田雅之、大和ハウス工業総合技術研究所 『段取りの"段"はどこの"段"?』(新潮新書)、通読。

息抜きに読んでみました。

住まいに関する専門用語が語源となっている日常用語や慣用句について
解説をした本です。

ただ、語源に混じって、単に「住まい用語にも同じ言い回しがあるよ」という程度の
言葉も混じっており、そこは中途半端さを感じてしまいました。

語源に関する解説の内容は、
住まいの専門用語自体が新鮮だったので興味深かったのですが、
残念ながら文章があまり面白みがなく、
うーん、週刊新潮連載も割にはアレだなぁ・・・・・という感じでした。


段取りの“段”はどこの“段”? 住まいの語源楽 (新潮新書)段取りの“段”はどこの“段”? 住まいの語源楽 (新潮新書)
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『複雑系のマネジメント』
- 2017/07/10(Mon) -
週刊ダイヤモンド編集部、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス編集部 『複雑系のマネジメント』(ダイヤモンド社)、読了。

一瞬大流行した「複雑系」という概念。
当時は本屋の店頭に山積みになっていましたが、
今や、この言葉を使う人っているのでしょうか?というぐらい一過性のブームでしたね。

で、本作は、現実のビジネスに生かせる複雑系の解説本という触れ込みでしたが、
うーん、やっぱり地に足がついていない抽象論のような印象でした。

あまり「複雑系」の定義をバチッとしないままに
ソニーの出井社長(当時)との対談に入ってしまうので、
ソニーの会社運営のどこが複雑系に該当して、どこが該当しないのか
良く分からないまま話が進んでいってしまいました。

そもそも、ソニーが、この手のビジネス本の成功事例として登場していること自体
なんだか時代を感じてしまうのですが(苦笑)、
複雑系ではソニーは救えなかったのでしょうかね・・・・。

いろんな対談が収められていますが、
なんだか、どれも断片的な話というか、
対談相手の得意領域の話に偏っていて、どこまで読んでも
複雑系の定義が良く分かりません。
ま、複雑系の定義が分かっている人が、ビジネス・ユースのために読む本なのかもしれませんが。

結局、対談ではなく原稿を上げている田坂先生の本が、
本全体の構成や流れは無視しちゃってますが(笑)、
その章だけで話が完結しているので、一番読みやすかったです。


複雑系のマネジメント複雑系のマネジメント
週刊ダイヤモンド編集部

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『フルサトをつくる』
- 2017/07/09(Sun) -
伊藤洋志、pha 『フルサトをつくる』(東京書籍)、読了。

完全移住ではなく、二拠点居住による田舎暮らしの楽しみ方を述べた本。

多様な生き方への社会的な許容度が次第に上がり、
また、情報インフラの整備や情報サービス技術の拡充により
ユビキタスな仕事環境が整いつつある現在において
可能になったライフスタイルだと思います。

どっぷり田舎暮らしに浸かってしまう従来の移住生活とは異なり、
逃げ場があるのは移住者側にとってストレスが小さいですし、
受け入れ側にとっても緊張感が和らぐのかなと思います。

ただ、それで生活が成り立つのかという経済的な面での不安は
移住者側にとっては付きまとうでしょうし、
受け入れ側にとっては、近づく機会が取りずらい、距離がなかなか縮まらないといった
不安は残ってしまうでしょう。

前者に関しては、このスタイルは、どんな環境にあっても
自分は生活に必要な稼ぎを得るための技術を持っているという自信があるか
もしくは、極端に楽観的な人にしか適用しにくいと思います。
もう、それは、個人の能力なり資質の部分に属する話なので、
人を選ぶライフスタイルとして、仕方がないかなと思います。

後者に関しても、結局は、本人のコミュニケーション能力とコミュニティの資質によるのかなと。
私は今、三重県内で、県庁所在地と超ド田舎の二拠点居住をしていますが、
最初の半年は超ド田舎でどっぷり田舎暮らしをし、
地元の方々との心の距離を縮めることができたので、
今は、何日も家を空けていても、「あぁ、津に行っとったん?」という感じで
近所の人たちも受け入れてくれています。
最初から二拠点居住をしていたら、「あの子は何しとる子かわからん」となっていたかもしれません。

ド田舎とは言え、漁師町で昔から人の出入りがある町なので、
一旦受け入れてもらえたら、信頼してくれるコミュニティだと感じます。
そのあたりは、地付きになってしまう農村よりも自由度が高いかもしれません。

本作は、そんな二拠点居住に憧れる人に向けて、
非常に現実的で実践的なハウツーを示しているので、参考になると思います。
ただ、私は、二拠点居住を実現した後で本作を読んだので、
「その通りだよね~」と納得性が高かったですが、
これから実現させたいと思っている人にとっては、
ハードルが高いと感じられるのか、役に立つと感じられるのか、
そこは正直わかりませんねぇ。
結局は、行動したものだけが得られる境地だと思います。


フルサトをつくる: 帰れば食うに困らない場所を持つ暮らし方フルサトをつくる: 帰れば食うに困らない場所を持つ暮らし方
伊藤 洋志 pha

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『だから日本はズレている』
- 2017/07/07(Fri) -
古市憲寿 『だから日本はズレている』(新潮新書)、読了。

先日読んだ上野女史との対談で、
著者を見る目が変わったので、早速著作を読んでみました。

「リーダー」「クールジャパン」など12個の切り口で
日本のおかしなところを指摘しています。

語り口が非常に軽いので、サクサク読めます。
「新進気鋭の社会学者が書いた本」として捉えると、拍子抜けしてしまうかもしれませんが、
「日本の変なところに突っ込みを入れたエッセイ」として捉えると、面白く読めます。

著者は一応、若者目線で日本を見ていますが、
しかし、若者に肩入れするわけではなく、今の日本の若者の限界も踏まえています。
今の若者に改革は無理とか。

もちろん、メインの突っ込みは、日本を動かしているオジサンたちに向けてのものであり、
確かに著者の言うとおりだなぁ・・・・・と納得する部分は多いのですが、
しかし、では、どう変えれば良いのか、変われば良いのかという視点は、
著者の物言いの立場からは生まれてこない気がしました。

何というか、社会学者の限界と言いますか・・・・・。

私自身、大学で社会学を学びましたが、
基本的に、現実世界を批判することで脚光を浴びる学問分野だと思ってます。
その批判が適切か、不適切化は別にして。

その場合、批判対象が居ないと目立てないわけで、
本作で言えば、ズレた日本がそこにあってくれないと、
社会学者としての発言がしにくくなってしまうわけです。

そして、批判が主役なので、解決策の提言が弱いというところが
社会学の弱いところではないかと感じています。

私自身、好きな社会学者の先生はたくさんいるのですが、
総じて、分析結果には納得できるも、提言内容には首をかしげたくなるケースが
多々あります。

提言内容に納得できるのは、むしろ分析内容のリアリティの無さに不満が残る
経済学の先生の方が多いです。

両方の学問の成果を捉えて、
自分なりの折衷案を見極めていくしかないですかね。


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『捜査一課Ⅱ』
- 2017/07/06(Thu) -
浜田文人 『捜査一課Ⅱ』(ハルキ文庫)、読了。

実家にあった本を何の気なしに持ってきて、
時間つぶし程度に読み始めたら、思いのほか面白くて一気読みでした。

シリーズもののようで、
登場人物たちの破天荒さは、第1話から読んだ方がしっくりくるのでしょうが、
とりあえず、警視庁捜査一課の面々が、
組織の在り方に囚われない異端児が揃っており、
その無茶な捜査ぶりを面白く読みました。

いつもなら、組織論を破壊するような異端児の話は好きではないのですが、
本作では、事件の捜査そのものよりも、刑事たちの人間関係を描くことに
力点が置かれているような気がして、読んでいて、
事件の真相解明自体には私が興味を覚えなかったので、
刑事モノだという意識が弱くなっていたのでしょう。
だから、あまり脱線しても気になりませんでした。

むしろ、組織の中での権力関係や、逸脱者と統率者のせめぎ合いの様な
まさに、人間同士がぶつかるところが生々しく描かれていて、
そういう点での組織論を描いた作品として面白かったです。

シリーズの他の作品がないか、実家を探索してみたいと思います。


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『里山資本主義』
- 2017/07/05(Wed) -
藻谷浩介、NHK広島取材班 『里山資本主義』(角川ONEテーマ21)、読了。

里海から里山と、逆の順番で読んでしまいました。
1作目である本作の方が、「里山資本主義」という言葉の本質を書いているのだろうなと
期待して読み始めたのですが、何だか、里海ほどの腑に落ちている感がなかったです・・・・。

紹介されている「エコストーブ」「CLT」「ジャムづくり」といった事例が、
それぞれは興味深い活動なのですが、
では、それらを横串として貫く思想は何なのか?と言った時に
「それが里山資本主義だ!」となる程までに、里山資本主義という概念が
定義づけられていないような印象を受けました。

要は、里山資本主義って何なのかが、私には本作を通して掴むことができませんでした。

マネー資本主義と対比して里山資本主義を説明しようとしていますが、
この設定が、そもそも誤っているのではないかと思えて仕方ありません。

マネー資本主義は、リーマンショックで気づかされたような
金融工学の結晶のような高度な金融商品が、現実世界と乖離して世界経済を大きく
動かす力になっていたというような現象に象徴されると思いますが、
そもそも日本の里山が廃れたり、里海が汚れたりしたのは
マネー資本主義のせいではなく、高度経済成長に代表されるような
従来型の資本主義のせいであり、時間軸がズレているように思います。

マネー資本主義と対比した方が、主張のインパクトは増すのかもしれませんが
腑に落ち感がなくなってしまうように思います。

そして何より、里山資本主義を体現する田舎暮らしというのは、
都市部の企業が日本全体の経済機能を担っているからこそ生まれる経済の安定感のおかげで
その傘の下でこじんまりと好きなことをして生きていくことのように思えてしまいました。
大きな庇護のもとで、その庇護の主体を批判しながら、安全な暮らしを謳歌するという
なんだか捻じれた立場に居るような気がしてなりません。

日本全体が里山資本主義の人々で溢れてしまったら、
経済活動として成り立たないように思います。
まぁ、人口オーナス期に入ってしまった日本は、国家の規模を縮小していく時期なんだ
ということなのかもしれませんが・・・・・。

里海資本論に比べて、なんだかモヤモヤが残る本でした。
それはやっぱり、里山資本主義とは何なのかが、
イマイチ私には分かっていないことに尽きるようです。


里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介 NHK広島取材班

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『里海資本論』
- 2017/07/04(Tue) -
井上恭介、NHK里海取材班 『里海資本論』(角川新書)、読了。

『里山資本主義』が売れたからって、パクリか!?」と思いきや、
藻谷さんとの共著者が書いた2番目の本でした。
失礼しました。

瀬戸内海でのカキ養殖による水質浄化や藻場再生の話に始まり、
海が身近な生活を送る人々の姿を描いていきます。

本作の主張で共感できたのは、
単に「自然は素晴らしい!」「環境保護だ!」と言うのではなく、
あくまで目指すのは自然との共生であり、人間の手を加えることで
自然の恵みを最大化しようというところ。

これまでの海を巡る経済活動は、短期的な視野での利益最大化を目指していたので
乱獲などの問題を抱えていましたが、長期的な視点を入れることで、
資源管理することが利益の最大化につながるという判断になります。

これは、私が大学生だった頃にモヤモヤと感じていた
経済学と社会学の視座の違いみたいなところと繋がり、共感できたのだと思います。
経済活動としては利益最大化や事業継続を目指しますが、
それにより生まれた社会問題を、私が学んでいた社会学のゼミテンたちは
「社畜」などと呼んで批判していました。

でも、私は、社畜では従業員の体力が続かず、離職もするだろうから
長期的に見れば企業にとってマイナスな事態であり、
従業員の働きやすさを追求して全体のアウトプットを高めるという視点は
企業側も持つインセンティブが働くはずだと思っていました。
経済活動と人間らしい生活の両立というところでしょうか。

それは、本作では、人間の暮らしと自然の共存という形で表現されており、
すんなりと腑に落ちたのかなと。

自然と人間、人間と経済、異なる立場の者たちが
お互いの利益を最大化できるポイントが、必ず見つかるのではないか、
それは、主義主張が異なる人間同士の間においても同様に
折り合う点が見つけられるのではないか、
そういう前向きな気持ちになれる本でした。


里海資本論  日本社会は「共生の原理」で動く (角川新書)里海資本論 日本社会は「共生の原理」で動く (角川新書)
井上 恭介 NHK「里海」取材班

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