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『八日目の蝉』
- 2012/05/20(Sun) -
角田光代 『八日目の蝉』(中公文庫)、読了。

角田作品の中では、一番有名といってよい作品でしょうか。

生後半年の赤ちゃんを誘拐してしまう主人公、
その衝動的な誘拐の直後から、「娘」と2人きりの逃亡生活が始まる・・・・・。

映画にもなったことから、
逃亡劇としてのサスペンス要素が強い作品なのかと思っていましたが、
それよりも、逃亡という設定を用いて、
昭和の終盤~平成あたりの時代を上手く描いているなぁというところに
目が行きました。

バブル前夜で取り残された廃墟のような地域に居残る老女、
共同生活と自然食品を謳い文句にしたカルト的な集団(これってヤ●ギシ?)、
そして、都会の生活から逃れる場所として描かれる小豆島、
時代を上手く切り取っていると感じました。

後半は、その誘拐された側の娘が大学生になったところを描きますが、
彼女が家族や周囲に向ける視線の冷徹さを、興味深く読みました。
特に、父と母への眼差しの冷静さ。
誘拐事件を通して、ダメな男、ダメな女ぶりを日本国中に知られてしまった両親に対し、
どのように振舞うべきかを考え、演じてきた年月を振り返っていきます。

彼女に課せられた、あまりにも思い過去。
それを、じっくり、時に溢れる思いと共に描いていくのですが、
しかし、最後、小豆島を訪れることで、何かしら掴んだような描写で終わるため、
なんとか救われたような気分で読み終われました。

読み応えのある作品でした。


八日目の蝉 (中公文庫)八日目の蝉 (中公文庫)
角田 光代

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『薄闇シルエット』
- 2011/10/11(Tue) -
角田光代 『薄闇シルエット』(角川文庫)、読了。

主人公ハナの一つ一つの行動&発言に、
「そのとおり!」と大きく相槌を打ちまくってしまった本作。

「結婚なんてつまんない」「『結婚してやる』って何様だ」という出だしから、
仕事と日常の線引きの曖昧さ、部屋での過ごし方などなど、
どれもこれも、自分を見ているようで。

ハナほど感情を露わにしないところと、仕事に対する現状維持願望の強さが
ちょっと違うかな?というぐらいで、ほぼ自分のことだと思って読み進めていました。

そんな状態で、タケダくんからの
「あんたやおれの話って、したくないってことでしか構成されていないんだよ」
という指摘には、ガツンと頭を殴られたような衝撃を受けました。

確かに、リスクを取らない限り失敗は無いわけで、
例えば、結婚をして苦しんでいる人を「馬鹿だなぁ」なんて目で見ることが出来るんですよね。
結局、変化の無い人生=リスクの無い人生に逃げているだけなのかも・・・・・。

だからといって、「やっぱり結婚すべきだな」という思想転換には至らないのですが、
今まで、自分ではベストだと思っていた選択肢が、
ベターな選択肢に過ぎないのだということが実感できました。
全て様々な要素のバランスの上で成り立っていることであり、
絶対的にベストだという選択肢はないのだと・・・・。

気楽な気持ちで読み始めたのに、あれこれ考えさせられた一冊でした。


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角田 光代

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『だれかのいとしいひと』
- 2010/07/05(Mon) -
角田光代 『だれかのいとしいひと』(文春文庫)、読了。

人生の送り方が不器用な人たちを主人公にした短編集。
文庫本の帯では「恋に不器用」となっていますが、
生きるということそのものに不器用なのではないかなと思ってしまいます。

「あぁ、そういうネガティブ思考、わかる、わかる」
「こういう時に、すぐに行動できないよねー」
という感じで、主人公たちのウジウジに共感できます。

でも、決して、マイナス思考なだけの作品なのではなく、
どこかポジティブなものも感じさせてくれるため、
読後感は、さわやかです。

なかなかの佳作だと思います。


だれかのいとしいひと (文春文庫)
だれかのいとしいひと (文春文庫)角田 光代

おすすめ平均
stars泣けますが。
starsドラマより現実の方がドラマチック
starsドラマチックな展開ではないけれど
starsいいものはいい。
starsだれかのいとしいひと

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『トリップ』
- 2010/01/14(Thu) -
角田光代 『トリップ』(光文社文庫)、読了。

面白い連作短編集でした。

大きな希望も野望もないままに
ただ毎日を暮らし続ける人たちが眺めた「世の中」。

平凡な人たちに見えながらも、
意外と見るべきところは見てたりして、
その目の付けどころや、指摘の中身が興味深いのです。

「ビジョン」「君の名は」「百合と探偵」「秋のひまわり」と続くところが
読み応えがありましたね。

短編の主人公のつなぎ方も、
「あぁ意外、次の主人公はこの人なんだ!」とけっこう予想が外れました(笑)。

面白く読みとおせた一冊でした。


トリップ (光文社文庫)
トリップ (光文社文庫)
おすすめ平均
stars普通じゃない
stars普通(?)の人たち
stars現実とファンタジーの境界線を楽しみたい。
starsここではない自分の居場所

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『幸福な遊戯』
- 2009/12/13(Sun) -
角田光代 『幸福な遊戯』(角川文庫)、読了。

あんまり自分には刺さりませんでした。

というか、世界観がよくわからなかった・・・という感じでしょうか。

自分が、あんまり虚無的なものに関心が無いからかもしれません。

いずれの物語の主人公にも、親近感を感じられなかったのが

刺さらなかった理由だと思います。


幸福な遊戯 (角川文庫)
幸福な遊戯 (角川文庫)
おすすめ平均
starsほのぼの
stars雰囲気を読むか、中身を読むか。
stars仮想的な自分を通して家族のあり方を問う
stars幸福な・・・
stars期待はずれ・・・

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『ピンク・バス』
- 2009/02/10(Tue) -
角田光代 『ピンク・バス』(角川文庫)、読了。

相変わらず、じとっとした生理的に不気味な女性を描く人ですねぇ。
(褒めてますよー)

実夏子の登場の仕方から家への居座り方まで
とにかく不気味でそばに居てほしくない感じなのですが、
(ちなみに「実夏子」という漢字の当て具合もフツーじゃない感じでピッタリ)
その弟であり夫のタクジも頼りないし不自然な行動だしで、
こんな家に住みたくないわ。

でも、実は一番気持ち悪いのは主人公であるサエコかも。
一見、普通の若い主婦の感覚を持っていそうに見えながら、
自分に都合の悪い過去の記憶を徹底的に抹殺し、
新しい自分に成り変われるという特技は、
そういう人が密かに自分のそばにいるかも・・・・と思わせる恐怖があります。

このサエコのキャラクター設定が、
とことんダメな子なのか、時折インテリなのかよくわからなくなるところが
あったのは残念ですが、ラストまできちんと魅せてくれました。

もう一遍の「昨日はたくさん夢を見た」は、
青春しているのか、していないのか、
そのあたりの微妙な感じが微妙に面白い作品でした。


ピンク・バス (角川文庫)
ピンク・バス (角川文庫)角田 光代

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おすすめ平均 star
starあまり面白くなかった・・・
star角田光代の世界観が堪能できる傑作
star包み隠さず

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『空中庭園』
- 2008/09/21(Sun) -
角田光代 『空中庭園』(文春文庫)、読了。

この週末、ほんとにだめだめで、本ばっかり読んでました。

で、ある家族を描いた短編連作のこの作品。
第1話目で主人公となった娘マナのあっけらかんとした考え方に、
「いいわ、面白いわこの娘、この家」と読み始めたのですが、
第2話で父親の本性発覚、まったくのダメ男(苦笑)。

いきなり、この家族の裏側というか、真実の部分を突きつけられ、
それ以降、どれだけこの家族が繕いあって、騙し合って生活しているか
その暴露のオンパレード。

酷い話なのですが、
どの登場人物も、あまり深く考え込まずに、
比較的明るく現実を受け止めている(ように振る舞っている)ので、
読んでいて、さほどユーウツにはなりませんでした。

でも、このやるせなさは、やっぱり角田作品でした。

家族であっても、やっぱ、他人なのかなぁ。

あと、野猿街道、東京の西の方にありますねぇ。


空中庭園 (文春文庫)
空中庭園 (文春文庫)角田 光代

おすすめ平均
stars家族の肖像
stars秘密ごとは他人には言わないから永遠にわかりません
stars総てを吐き出すということ
stars可愛い感じの方だけど、
starsあなたの家族も同じではありませんか?

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『みどりの月』
- 2007/07/17(Tue) -
角田光代 『みどりの月』(集英社文庫)、読了。

よくお名前を目にするので、
いつか読みたいなぁと思っていた作家さんです。
ブックオフで本作を見つけたので、早速読んでみました。

ところが、読んでいて常に付きまとってくるのが「不快感」。
収録されている「みどりの月」「かかとのしたの空」ともに
一種異様な女性が登場し、主人公の日常にべったりと張り付いてきます。
彼女たちの存在が不気味なことも不快感の原因の一つですが、
それよりも大きな原因は、主人公が不気味な女性たちにみせる「諦め」にありました。

彼女たちから逃げよう逃げようともがいても追いつかれるのではなく、
逃げたいと思い行動を起こそうとするものの、
ふとした切っ掛けで止めてしまう、諦めてしまう不甲斐無さ。
そこに苛々とさせられてしまいました。

解説には、「角田さんの作品の主人公はイライラしていることが多い」と
書かれていたので、それが作風なのかもしれません。
むしろ、主人公のイライラが増幅されて、
読者である私に伝わってきているのだと考えれば、
この作家さんの力量なのだと思います。
でも、不快感を感じてしまう小説は、苦手だなぁ。


みどりの月 (集英社文庫)
みどりの月 (集英社文庫)角田 光代

おすすめ平均
starsなんとなく読んでしまった
starsルームシェアリングと旅
stars自由と責任
stars現実ではない構成
stars人間関係の内側とその歪みが見事。

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