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『光と影の誘惑』
- 2007/12/09(Sun) -
貫井徳郎 『光と影の誘惑』(集英社文庫)、読了。

中編4編が収められた作品。
安定した面白さでした。

「長く孤独な誘拐」
息子が誘拐され、その犯人からの要求はある子どもを誘拐すること・・・
なんとも斬新な設定にぐいぐい読めました。
誘拐犯に指示されて動きまわるくだりは、一つ一つの指示に意味があり、
また伏線の張り方も面白かったですが、
若干、『誘拐症候群』を思い出してしまうところもありました。
結末の持って行き方は、貫井作品らしい救いのないものでした。

「二十四羽の目撃者」
本作は、謎ときのテイストに絞った作品でしたが、
トリックの弱さが腑に落ちませんでした。
サンフランシスコを舞台に米国人の保険屋の主人公と日系人の被害者という設定が
なかなか面白そうな雰囲気を醸し出していただけに残念です。

「光と影の誘惑」
最後のどんでん返しを読んで、それまでの各場面は
いったい物語のどの部分を描写していたのだろうかと
確かめるために再読したくなりました。
競馬場で声をかけて近づくという話は、どこかで読んだ記憶があって
そこに引っかかりを覚えてしまったのは残念でしたが、
あの結末なら、それも帳消しで満足です。

「我が母の教えたまいし歌」
父の死により、家族の秘密を知ることになった主人公。
これも、結末に驚きました。まったく予想していませんでした。
冒頭、母の臨終の場面から始まったのも納得。
ただ、家族の秘密をたどっていく場面で、
「父と母が姉を殺したのではないか」という推測をするシーンだけは、
リアリティがないように思えました。
いくら自分が知らなかった姉のことであり、姉と両親の関係に疑念があったとしても
自分の両親が殺人に関与しているなんてことを
何の証拠も無しに思ったりするのかな?と。
ミステリおたくならともかく、普通の大学生はそんな想像しないんじゃないでしょうか。
ま、それはともかく、家族の真実を知ってしまってから母の死までの間、
この主人公がどんな日々を送ったのか、知りたいと思いつつも、
想像するのは恐ろしいことです。


光と影の誘惑 (集英社文庫)
光と影の誘惑 (集英社文庫)貫井 徳郎

おすすめ平均
stars期待を込めて
starsあくまでも個人的な好みで星3つ
starsサプライズエンドだけが魅力じゃない
starsなるほどー。
stars地味な一冊だが・・・

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誘拐症候群
誘拐症候群貫井 徳郎

おすすめ平均
starsキャラクター
starsスリリングな展開♪
stars第1弾よりパワーアップ
stars匿名性
starsシリーズ第2弾もなかなか

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『迷宮遡行』
- 2007/11/06(Tue) -
貫井徳郎 『迷宮遡行』(新潮文庫)、読了。

うーん、Amazonでの評価低いですねー。
でも、私的には楽しめました。

まぁ、ストーリー的には「彼はそういう判断するのか・・・」
「随分思い切った行動するねぇ・・・」「あらま、都合のいい展開」
という感想が随所にありましたが(苦笑)、
元々の設定が「一市民がヤクザ世界に巻き込まれる」という
非現実的なものですからねぇ・・・。
一連の出来事の発端も、「自衛官がヤクザの組長を狙撃する」という
一言で言ってしまえば「有り得ない状況」ですから。
「有り得ない話なんだ」と最初から割り切ってしまったために、
設定も展開も却って気にならなかったのかと思います。
でも、最後、絢子の本性としての人物像がよく伝わってこなかったのは残念でした。

そういう中で私が楽しんだのは、物語の語り口。
貫井作品にしては軽い物言いをするキャラクターが主人公だったので
なんだか新鮮な印象を受けました。
そして、結構、このノリは好きでした。
(読むタイミングによって、私の中でも好き嫌いが分れそうですが)
結局は、作家さんの書く文章の安定性と言いますか、
まぁ、なんだかんだ言って、私に貫井さんの書く文章が合うのだと思います。


迷宮遡行 (新潮文庫)
迷宮遡行 (新潮文庫)貫井 徳郎

おすすめ平均
starsうーん。あのラストはちょっと無理やりすぎかな…
stars救いが無い
stars評価が難しいかなぁ
stars最後がちょっと無理やりっぽい…
starsえー!

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『天使の屍』
- 2007/10/31(Wed) -
貫井徳郎 『天使の屍』(角川文庫)、読了。

息子に自殺された父親が真相を探っていく物語。
しかし、そのさ中に、第2、第3の自殺が相次ぎ・・・。

14歳の少年たちとその家族や社会との隔絶の様子を
ミステリーという枠の中でどう描くのかな?という興味があり買ってきました。

登場する14歳たちは、皆が皆大人びた様子で
いっぱしの論理をもって主人公を戸惑わせる・・・。
そういう子供しか登場しないのはちょっと偏っている気もしましたが、
彼らの醒めた視線は現実的なように感じました。

これら14歳に対峙した時の主人公の戸惑いの描き方等は、
読み応えがありましたが、真相究明の方は、ちょっと違和感がありました。

話が急展開するきっかけとなる米倉の登場が唐突すぎるように感じましたし、
最後に詳らかになる自殺の真相についても、
この理由で5人もの人間が死ぬのかなという思いは拭えません。
話としては辻褄が合うけど府には落ちないなぁという感じです。
何よりも、主人公である父親が、この理屈でホントに納得しているのかという
疑問がありました。

それでも、現在の中学生を描いた作品として眺めれば、興味深い作品でした。
生活安全課の平井刑事がこぼす今どきの子供社会に向けたちょっとした一言が
的を射ているように感じました。


天使の屍 (角川文庫)
天使の屍 (角川文庫)貫井 徳郎

おすすめ平均
stars同じ中二として……
stars思わず目を背けたくなるが、ぜひ皆さんに読んでほしい傑作!
stars意欲作
starsいくらなんでも
stars子供の考えって・・・

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『崩れる』
- 2007/08/16(Thu) -
貫井徳郎 『崩れる』(集英社文庫)、読了。

長編作家さんだと思い込んでいたので、
この短編集をあまり期待せずに読み始めたのですが・・・・
こりゃ傑作!

短い中で心理描写が見事です。
特に女性を主人公にした時の気持ちの向う先や移り変わりの描き方が見事で、
男性なのに、なんでここまで描けるんだろうかと思ってしまいます。

乃南作品
を読んだ直後だったのに、
まったく引けをとらない女性心理の描写です。
乃南作品も本作も、女性が狂気に嵌りこんでいく様がまざまざと描かれており、
ある意味、真夏のホラーが堪能できました。

8つある作品の中では、表題作の「崩れる」が一番はまりました。
特に、主人公の主婦が、カスの旦那ではなく息子から先にいった
というところに、母性愛を超越した狂気が見てとれ、
それをまたあっさりとした調子で描くものだから、恐怖倍増です。

めっけもんの一冊でした。


崩れる―結婚にまつわる八つの風景 (集英社文庫)
崩れる―結婚にまつわる八つの風景 (集英社文庫)貫井 徳郎

おすすめ平均
stars平凡な日常に大きな落とし穴が・・・
stars日常が描かれている故に怖い
stars怖いよね。
stars秀作揃い!みんな共感する部分があるはず
stars女性の心理が描けている!

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『プリズム』
- 2007/07/26(Thu) -
貫井徳郎 『プリズム』(創元推理文庫)、読了。

「本格ミステリの極限に挑んだ衝撃の問題作」とあったので、
『慟哭』を読んだ身としては、大変期待して読んだのですが、
あんまり人生の重みを感じさせる事件ではなく、
正直なところ、期待はずれでした。

解説を読んで、著者が目指したものや、
ミステリー分野におけるその位置づけは理解できましたが、
読み終わってから「なるほどねぇ」では、
やっぱり物足りない・・・。

プリズム (創元推理文庫)
プリズム (創元推理文庫)貫井 徳郎

おすすめ平均
stars結末なき結末とでもいうのか
stars『慟哭』から派生した新機軸の小説です。
stars藪の中
stars消化不良
stars驚いた

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慟哭 (創元推理文庫)
慟哭 (創元推理文庫)貫井 徳郎

おすすめ平均
stars冷たい印象
stars予備知識のジレンマ
starsクセが強い小説
stars未解決
starsおもしろいけど…

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『誘拐症候群』
- 2007/06/22(Fri) -
貫井徳郎 『誘拐症候群』(双葉文庫)、読了。

小口誘拐の手口もスマートでしたが、
やはり、何といっても、大きな誘拐の方の手口はお見事!
犯罪小説の醍醐味の一つです。
ただ、その手口の鮮やかさと実際の犯人像が釣り合っていない気がして
そこはちょっと残念でした。

また、小口誘拐と大きな誘拐がどういう風に繋がっていくのか
期待しながら読んでいましたが、期待が複雑に膨らみすぎたようです。
ま、こんなもんかな。

「症候群シリーズ」は初めてでしたが、
環なる人物のモノの考え方は、怖ろしいものの興味深いものがあります。
このシリーズ、追いかけたいですね。

誘拐症候群
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『慟哭』
- 2006/04/23(Sun) -
貫井徳郎 『慟哭』(創元推理文庫)、読了。

一気に読み上げました。

いろんな方のblogでこの作品が上げられているのを見て、
この作家と作品を初めて認識したのですが、
読んでみて、その人気のほどが解りました。

何よりもまず嬉しかったのは、文章が読みやすいこと。
短く、簡潔で、それなのに言葉の選び方が安っぽくも堅苦しくもない。
おかげで、スイスイ読めました。

また、テーマ設定も私には新鮮で、
これまで新興宗教に纏わる作品はほとんど読んだことが無かったので、
「宗教にハマる」という過程を興味深く読みました。
幼女誘拐事件とカルトという、
現代の2つの大きな社会問題を見事に絡めて描いています。

唯一読んでいて気になったのが、
誘拐犯人がそれまでの誘拐目的とは異なる目的で次の標的を定めた件で、
「狂信的な目的意識から脱線するのは、ありえないんじゃないかな?」
と疑問に感じたのですが、
それも最後まで読んでいけば、納得の出来る展開になっていました。

それにしても、ここ数年のサスペンス作品の書き手は、
素晴らしい才能が続出してますね。

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star素直に驚いた。
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