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『化石』
- 2005/12/09(Fri) -
井上靖 『化石』(角川文庫クラシックス)、読了。

自分が死病にとりつかれていることを知った人間が
どのように考え、どのように行動するのか。
死病にかかった100人の人間がいれば、100通りの考えと行動があるのだろう。
この一冊を読んだだけで、死病を患った人間を知ったことにはならない。
しかし、たとえ1/100のことであれ、この一冊は、ある人間の死病とのつきあいを
余すところなく描いている。
ちょっとしたきっかけで、大きく変化する心の動きを見事に捉えている素晴らしい作品だった。

一方で、主人公・一鬼が、死病と闘うのではなく、ただ受け入れようとする姿勢、
むしろ、医師や周囲の人間を拒むかのような姿勢を、
実際に必死で死病と闘っている人間、また死病と闘い力尽きた人間は、
どう感じるのだろうかと思うと、居た堪れない気持ちになった。
「生きよう」という気持ちに積極的になれない主人公に対し、
死病と闘った人を見送ったことのある自分は、
複雑な気持ちになった。

化石
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