『疾走』
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- 2008/05/31(Sat) -
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重松清 『疾走』(角川文庫)、読了。
秀才と言われた兄が放火犯で捕まった・・・・・ それを契機に追い詰められる家族、そして弟シュウジ。 読む前から、重いだろうなという予感はあったものの、 ここまでしっかり描き込まれると、途中で放棄したくなります。 それでも放棄することができないほど捉えられてしまう私。 十四歳が背負った運命はあまりに過酷で、 「作り物じみてるんじゃない?」と思ってしまう自分も居るのですが、 でも、一つ一つの展開に合理性があり、 それらが繋がったときに、こんな悲劇の物語になってしまうのだと納得。 表立っての物語の転機は兄の放火となっていますが、 しかし、物語が始まった時点で、なんだか違和感を与える家族。 すでに砂上の楼閣となっています。 崩れるのは時間の問題。 近隣地域の差別問題、バブル期の地方開発、いじめの構造、 能力の無い教師、地方の進学制度、親子間のコミュニケーション、性・・・・・・ 様々な問題の絡まりをひとつひとつ焙り出し、 人間は、複雑な環境に置かれながらも、時に単純な理由で激烈な行動を起こす、 そういうことを考えさせられた作品でした。 テクニカルな面では、終始、主人公を「おまえ」と呼びかける文章は 慣れるのに時間がかかりました。 最初は、「主人公自身が自分の心の内を語る形式の方がいいな」と思っていたのですが、 下巻に入り、「客観的な視点の置き方で助かった」と思いました。 主人公の独白形式だと、重すぎて、とても読めなかったような気がします。
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