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『底辺への競争』
- 2024/04/22(Mon) -
山田昌弘 『底辺への競争』(朝日新書)、読了。

少子化のトピックスなどがあると、識者としてよくコメントを見かける著者。
本もヒットしていますし、お名前は意識していたのですが、著作を読むのは初めてです。

「底辺への競争」という言葉自体は、アメリカで戦前から言われていたようなのですが、
つまりは、社会の底辺に堕ちていかないための必死の争いを表しているとのこと。
アメリカでは特に若者の貧困化・下層化を指しているようです。
アメリカの最下層となると、ホームレスのような、経済社会からはじき出されるような状態だと
思います。

日本では、そういう生活が全く成り立っていないような階層に堕ちるのではなく、
経済社会の中には辛うじて居られるけれども、最下層からはどう頑張っても脱出できないという
貧困の固定化のような状況が起きているとのこと。

上を目指しているのに上がっていけない悔しさを感じている人たちも居れば、
そもそも上を目指すことを望まない若者もたくさんいるという事実も怖いです。
三浦展氏の『下流社会』を読んだ時、「上昇志向のない若者」という存在が描かれていて、
それまでは、そういう野心の無い人たちのことって、意識したことがありませんでした。

しかし、実際に私のサラリーマン時代に、私のいたチームに移動してきた5歳ほど上の先輩は、
「出世したくない、重たい責任を負いたくない」と言って、昇進試験とか、形だけ受けてたものの
たぶん真面目に回答せずに、いつも落ちていたようです。
結婚してて、子供もいるのに、「今が楽だから」とい理由で上を目指さない人を初めて身近で見つけて
「そんな価値観があるのか!」と衝撃でした。

ただ、この先輩も、やる気を出して昇進試験を真面目に受けたら、人間性は穏やかな人だったので
たぶん課長ぐらいまでは出世できたんじゃないかと思います。
今や、本人の意思とは関係なく、「出世できない人」「そもそも出世ルートが存在してない人」
「そもそも会社に就職できない人」「そもそも大学に進学できない人」というように
上にあがるための階段が全く周囲に見つけられない人が大勢出てきたというのが
社会の不安定化そのもののようで、怖いです。

私自身は今のところ、親のおかげで大学まで出してもらい、会社もまともなところに入れて、
その後脱サラしても生活には困らない程度に稼げて、一応貯金もそこそこ貯まりました。
でも、今はまだ親が大きな健康不安もなく2人で穏やかに暮らしてくれているからいいですが、
例えば親が大病したとか、認知症が出たとか、そんなことになったら生活は一変しますし、
自分自身が病気になることや、鬱病になること、大きな事故に巻き込まれることなど
いくらでも不安要素があります。

何か起きたら、簡単に下の層へ落っこちていくんだろうな・・・・・と本作を読みながら思っちゃいました。
そして、一度下に落ちたら、簡単には上がれなさそうで。
もう一度サラリーマンに戻るにしても入社の競争が激しいでしょうし、
同じ業界に戻るにしても、10年近いブランクは知識の欠落が大きいでしょうし、
そもそも最近の企業で使われているインフラ類に慣れるのにも時間かかりそうで。

本作では、未婚化についても語られていますが、正直、自分の感覚としては、
「カネ」が最大の問題なのか?という疑問があります。
もちろん、1人育てるのに多大な生活費や教育費がかかるので、2人目、3人目に躊躇するというのは
よく理解できます。しかし、それ以上に、夫婦共働きで、女もキャリアの継続を要求され、
家に帰って子供の世話をし、オンライン化が進んでいるので家でも残業が出来てしまう・・・・みたいな
社会からの「より良い男性・父親像」「より良い女性・母親像」みたいな要求が
多種多様に及び、なおかつレベルが高いものを求められ、心身ともに疲弊してるんじゃないかと思います。
それを横目で見ている二三歳年下の後輩たちは、「あんな辛い思いをしたくない・・・・・」と判断して
結婚まではするけど子供は作らないとか、そもそも結婚しないとか、というような選択が
増えてるんじゃないかなと感じてます。

でも、彼らも、例えば政府のアンケートとかで聞かれたら、そういうフワッとした感覚的不安を述べずに
「お金が・・・・」とか「キャリアが・・・・」とか、分かりやすい回答をしちゃうんじゃないかと。

このあたり、誰か、若者の本音を引き出す調査ができる人はいないものですかね。




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