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『風水先生』
- 2024/04/01(Mon) -
荒俣宏 『風水先生』(集英社文庫)、読了。

ぱっと見、小説かな?と思うようなタイトルですが、
荒俣センセが風水に興味を持ち、のめり込んでいくプロセスが
「週刊プレイボーイ」の連載という形でまとめられています。

今となっては、「風水」というのは、たぶん多くの日本人が知っている概念だと思いますし、
(本質が理解できているかとか、共通認識となっている定義があるかとかは別として)
家を建てたり、土地を買ったり、引っ越したりするときに気にする人もいると思います。

ところが、本作が連載されていた1990年代半ばの段階では、
荒俣氏自身も「風水って何?」という状態だったようで、隔世の感ですね。

冒頭、香港での香港上海銀行と中国銀行の本社ビル建て替え戦争の話から始まりますが、
金融業という近代的な事業を行っている、しかも世界的に名の通った企業が、
大っぴらに風水師を雇って建物の設計やデザインに口を出させ、
さらには香港の市井の人々が、「あんなことをして風水的に大丈夫なのか」という
疑問や不安を抱いて噂でもちきりという状況が興味深いです。

日本でも、風水に凝っている経営者とか、風水を気にする経営者はいると思いますが、
基本的には、こっそり裏で雇うんじゃないかなと思います。社内的にも内密にして。
やっぱりどこかオカルトチックなものを感じちゃいますからね。

しかし、本作を読んで、特に、韓国や沖縄における日常生活に溶け込んだ風水の話を読むと、
風水は神道と同じような、「規律ある生活」「生活の知恵」というようなものなんじゃないかなと
思うようになりました。

例えば、台所の位置の話。火を使う台所は、水の方角の北に配置して中和するという考えに
基づくようですが、食品を扱う台所は、陽の光が差し込みにくい北側に配置することで
腐敗や食中毒を防ぐという効果があるのではないかなと思います。

太古の昔からの経験で、台所は北に置くと健康が維持できる、というような知恵が生まれ、
それを社会に広める際に、「衛生管理のために台所は北に」という衛生教育を施すよりも、
「風水的に台所は北に置かないと大変な災厄が訪れるぞ」と脅かした方が
教えを順守しようとするのではないかなと思います。

そういう、「人々を適切な行動に向かわせるための魔法の言葉」として風水という概念が
生まれてきたのではないかと思いました。

この科学技術が進んだ現代でさえ、「風水でこう言っているから」という理由で従う人が
多数いることを思うと、風水とか宗教とかは、社会の規律づくりに上手く活用されてきたんだろうなと
感じました。




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