fc2ブログ
『地雷を踏んだらサヨウナラ』
- 2024/03/31(Sun) -
一ノ瀬泰造 『地雷を踏んだらサヨウナラ』(講談社文庫)、読了。

ブックオフの棚で本作を目にして、そう言えば、こういうタイトルの映画があったなぁ・・・・と思い
買ってみました。

ちょっと前までは、私自身、「ジャーナリスト精神」「報道する意義」みたいなものを前面に出して
戦地に赴きセンセーショナルな写真や映像を撮ることを生業としている人たちに対して
批判的な感情を持ってました。

ベトナム戦争などの、私が生まれる前に日本の周辺で起きた戦争や内戦を舞台に、
「正義」や「報道」を盾にして、自分自身の「見たい」「撮りたい」という欲望を満たしている
人たちなんじゃないかと感情的に反発心を覚えてました。
たぶん、学生運動などに熱を上げていた世代の人たちが、
こういうフリージャーナリストを持ち上げるような姿勢でいることに対して
嫌悪感を覚えていたのかもしれません。

そして、安田順平氏の事件もあり、大学の先輩が世間から大バッシングを受けているのを見て
余計にそういう感情が増幅されていった気がします。

しかし、最近になって、「私たちが脳内に持っている情報の95%は、マスメディアを経由して
間接的に得たもので成り立っている」という言葉を読んで、嫌悪感がかなり少なくなりました。

例えば江戸時代は、瓦版や噂話を除いて、その人の脳内のほとんどは、自分自身で見たり
体験したりした一次情報で成り立っていたと思います。
しかし、現代においては、95%どころか99%が自分では直接見たり体験したりしていない
間接情報でしか理解していない世界で脳内は構成されている、もしかすると自分が認識している
世界の99%は必ずしも事実ではないかもしれない・・・・と思うようになりました。

別に、陰謀論とかにはまっているのではなく(苦笑)、情報を鵜呑みにしてはいけない、
自分の頭で整合性があるかきちんと考えてから受容しなさい、ということ。
大学生の頃に、授業で散々言われてきた「社会と向き合う姿勢」ではあるのですが、
40代になってようやく実感できたというか、腑に落ちたというか、そういう感覚です。

そして、この99%の情報を与えてくれるのは、大半がマスメディアやネット情報であり、
一部だけが書籍という歴史あるメディアということを考えると、
メディアの言うことを疑え!という姿勢も大事ですが、疑うも何も、そもそもメディアやネットが
伝えてくれないことには知ることすらできないわけで、特に戦地という極限の世界においては
大手メディアは危険を冒して社員を派遣することはしないでしょうから、
著者のようなフリージャーナリストが戦地に行こうとしない限り、私たちは知ることができないんだという
ある種、当たり前のことを、最近は実感するようになりました。

ウクライナの悲惨さも、ガザの現状も、それを取材し伝える人がいるからこそ日本に住む私が
知ることが出来るわけで、例えばアフリカで起きている内戦とか、もっと近いところでは
ウイグルで起きている中国支配の状況とか、よく分からないことも世界にたくさんあります。
それらが十分に伝えられていない理由は、「それが日本にとって影響度合いが小さいから」という
理由以上に、「それらを伝える素材としての映像や写真がないから」、さらに言ってしまうと
「それらを伝える素材としての映像や写真のメディアにおける相場が安いからジャーナリストも狙わない」
みたいなところがあるのではないかと思ってます。

映像や写真がなければ、報道されることがない、そもそも無かったことになってまうというのは
怖い状況だと思います。今はネット世界で個人でもどんどん情報発信できる時代とは言え、
反対にフェイクニュースの氾濫という状況も生んでしまっており、ますます情報リテラシが
一人一人に必要になっているような状況です。

戦場で仕事をしている日本人ジャーナリストの中では、宮嶋茂樹氏は昔から好感をもって
眺めてましたが、理由は、「俺は金になる写真を撮る!」「金になるなら戦地の写真も
芸能人スキャンダルも同じように真剣に撮る!」という割り切り方が、とても潔いと感じるからです。

宮嶋氏も、「世界の今を記録したい、伝えたい、知って欲しい」という熱い思いがあると思うのですが、
そういう青臭いことを言うのを恥ずかしがって、全て金と欲に置き換えてしまうところが
新人類世代っぽくて好きです(爆)。
団塊の世代の青臭さとの対比が際立ちます。

というわけで、本作も、文章を読むと、やっぱり青臭さというか、ジャーナリスト精神に燃えている
ところが鼻につくような感覚も覚えますが、でもやっぱり、カンボジアやベトナムの状況を
日本に伝える一翼を担ったという点では、やっぱり大きな功績だと思います。

写真もたくさん収められていて、特に兵士たちとの距離感が近いところが
著者の特徴なんだろうなと思いました。
お母さんも手紙の中で述べてますが、兵士ではない、市井のカンボジア人たちの
笑顔のショットが素敵です。




にほんブログ村 本ブログへ

関連記事
この記事のURL | | CM(0) | TB(0) | ▲ top
<<『風水先生』 | メイン | 『デフ・ヴォイス』>>
コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top
トラックバック
トラックバックURL
→http://seagullgroup.blog18.fc2.com/tb.php/7223-b8616f78
| メイン |