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『少年H』
- 2024/03/05(Tue) -
妹尾河童 『少年H』(講談社文庫)、読了。

国民的ヒット作だったので、ブックオフに100円で大量に出回り始めたときに買い、
しかし、とりあえず買っただけだったので上下巻のボリュームに手が伸びず、
ずっと積読でした。

昨年、井沢元彦氏の『逆説の日本史』を読んでいたら、戦国時代を扱った巻なのに、
急に『少年H』は嘘ばっかり・・・というような批判が展開されて、
俄然、興味が湧いてきました(爆)。

今回読むにあたっては、作品の出来がどうかということよりも、一体どこが批判されたんだろうか?と
間違い探しをするような気持で読みました。

戦時中から日本の軍国主義に対してやたら批判的な目を持つ少年だったり、
父親との会話でも「外では言うなよ」という前提で敗戦予想をしていたり、
近隣や同級生たちも、8月15日を迎えて「やっぱり負けると思ってたわ」みたいな割り切りぶりだったり、
「いやいや、そんなに戦局を俯瞰できるだけの情報を得てたのか!?」と思う部分は多々ありましたが、
かといって、それを否定するのって、結構難しいよな・・・・とも感じました。

時系列がおかしいとか、戦後に開示された情報を知っているのはおかしいとか、
そういう指摘は、ある程度客観的な証拠に基づくものかと思いますので、
ダメ出しされるのも仕方ないかなと思いますが、
「子供がここまで冷静に判断できているのはおかしい」とか
「日本の負けをあのタイミングで予想できているのは普通じゃない」とか
「戦後の民主主義や平和主義に通じる見方を戦時中からできているのは不自然」とか
こういう指摘は、感情では共感出来ても、理屈で論じるのは難しいですよね。
個人の内心ですから。

「そんな子供いないだろ!」というツッコミは、自分もそうだなと思いつつ、
もしかすると超絶情報処理能力の高い子供だったかもしれないし、神戸で外国人相手に商売を
していた父親のおかげで外国人から特殊な情報を仕入れていたかもしれないし、
戦後の民主主義や平和主義に近い考え方を自力で開発して持っていたかもしれない、
その可能性を否定するのって、難しいと思うんですよね。

まぁ、文庫化する際に、結構、批判された部分は削除や修正が入ったようなので、
私が読んだのは、かなり取り繕われた後の文章なのかとは思いますが・・・・・。

というわけで、内容の正誤とか、時代の感覚をどれぐらい客観的に反映できているかという点は
私には評価できないというか、判定するのは困難だよなー、と思いながら読みました。

一方で、個人的に気になったのは、凄い記憶力だな!ということ。
戦争という特殊な時代を生き、空襲で死にそうな目に遭ったり、
貧しい日々を自力で潜り抜けてきたりと、非常に濃い毎日を過ごしてきたであろうから、
平和ボケで生きてきた私よりは、いろいろ記憶に刻まれた体験が多いのは、
そりゃそうだろうなと思います。

それにしたって、この分量!とは思ってしまいます。
上下巻で描かれたのは、H少年が過ごした6~7年間ぐらいの出来事だと思いますが、
正直、わたくし、自分の40年以上の人生を文章に起こしても、上下巻の分量で
書ける自信がないです(苦笑)。

3.11の大地震は、東京の勤務先のビルで遭遇し、震度5強で人生で初めて屋内は危険だから
屋外に避難するという体験をし、リアルタイムで東北の被害の様子がどんどん分かってくる恐怖を体験し、
電車が止まってるから歩いて自宅に帰り、土日休みの間は原発が爆発したらどうしようと
ドキドキしながらテレビとネットで情報収集した日々。

命の危険が目の前に迫っているまでの恐怖心はなかったものの、
社会全体が混乱している様子がひしひしと伝わり、自分もその中の一人だという実感がありました。
危機感的には、空襲が始まる前あたりのレベル感なんじゃないかと勝手に想像しましたが、
著者のように、誰と何を話したとか、どんな行動を自分が起こして何を感じたかとか、
非常に断片的にしか記憶が残っておらず、本作のようなストーリーで語れるほどの記憶がありません。
当時のBlogを今読み返してみて、へー、そうだったのか・・・・と自分で意識的に記録したことですら
記憶が途切れ途切れ。

もし、3月11日から、次に会社に出勤した3月14日までの4日間を日記的に書き起こせと言われても、
たぶん、断片的な場面しか思い出せず、日記ほどの分量にならないように思いますし、
無理に文章にしようとするとストーリーを捏造してしまいそうです。
当時のテレビ番組や新聞記事、ネット記事を読み返して、
また会社での仕事の記録とかを見返したら、もうちょっと事実に基づく記述に修正できるかもしれませんが。

というわけで、本作に限らず、戦争体験について書き起こした作品は、
相当程度、戦後の記憶や自分の後付けの考えが混在しているのは仕方ないだろうなと思います。

捏造だから発表するな!ではなく、本作のようにとりあえず出版させて、
変だという指摘を入れられる状態を維持することが、健全な社会なのかなと思いました。

とりあえず、次は、「『少年H』批判本」をブックオフで見つけて読まねば!(笑)。






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