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『共喰い』
- 2024/03/04(Mon) -
田中慎弥 『共喰い』(集英社)、読了。

芥川賞受賞作は、純文学色が強すぎるような気がして、
どうにも私は苦手意識があるのですが、本作は、受賞時から気になってました。
あんまり痛々しい作品はできれば避けたいクチなのですが、なぜか本作は気になっちゃってまして。
ブックオフで100円で並んでいたので、チャレンジ。

芥川賞受賞作の「共喰い」と「第三紀層の魚」の2編が収められています。
後者も、「共喰い」で受賞する1年前に、芥川賞候補にノミネートされた作品だそうですね。

まずは受賞作の「共喰い」。
狭い地方の町の中で、高校生の主人公は、父と愛人と一緒に住み、
分かれた母は同じ町内で一人で魚屋を営んでいるが時々店を覗きに行く間柄。
主人公は、父が愛人を殴りながら性交渉をしている様子を日常の一コマとして認識しており、
自分が付き合い始めた女の子に対しても、同じように暴力をふるってしまうのではないかと
不安な気持ちを抑えられず・・・・・。

いやー、グロい設定と展開です。
主人公が恋人の女の子への接し方で感じている不安の形は、別の女性に対して表面化し、
さらに、恋人の女の子の方は、別の方向から突然やってきた暴力に虐げられ・・・・・。

小説とは言え、終盤のあんまりな出来事の連続に悲しみすら湧いてこない感覚ですが、
主人公の少年が怯えている「父の血」については、私の想像を刺激してくる怖いテーマでした。
科学的に言うなら「遺伝」と「環境」ということなんでしょうけれど、
私自身、昔は、「環境」が子供に与える悪影響みたいな部分を重視して
可哀そうな生活環境に置かれている子供たちに同情心を寄せていたところがありますが、
最近は、「遺伝」の方が強く気になるようになってきました。

橘玲氏の著作とか、岡田斗司夫氏のYoutubeチャンネルとかの影響が大きいように思いますが、
「遺伝」って、「環境」と違って、本人にも周囲にとっても、どうしようもないもの、
諦めて受け入れざるを得ないもの、というところが、本当に怖いですよね。

女を殴って快感を覚えている父、そんな父から性質の遺伝を受けているであろう自分、
自分も彼女を殴って快感を覚えてしまったらどうしよう・・・・・・・・
この悩みは、しんどいですよ。
好きな相手を傷つけるわけですから。

このどうしようもない自分の中に存在してしまうモノに対する
葛藤のようなものがしっかりと描かれていて読みごたえがありました。

芥川賞の選考委員である高樹のぶ子氏が選評で「中上健次の時代に戻ったかと思わせた」と
述べてましたが、ああ、そうか、中上健次作品の重苦しさ、逃げられなさと同じなのか・・・・と
理解できました。

ちょっと日本語の文章が読みにくい(意味が取れない)と感じた部分が何か所かありましたが、
物語の力で最後まで読ませてくれました。

「第三紀層の魚」は、「共喰い」に比べると、まだテーマは受け止めやすいものでした。
自殺とかも絡んできますが、「遺伝」のような「未来の自分」に関わるテーマとは
ちょっと違っていたので、まだ耐えられると言いますか。

こちらも芥川賞選考委員の山田詠美氏が選評で述べていた以下の内容が、私の感想と合う感じでした。
「四代に渡ってつなぎ止められて来た「負け戦の勲章」が苦い魅力を付け加えている。
 最後に、チヌではなく大きなコチを釣って泣いてしまう少年の涙の出所がいじらしい。
 しかし、曾祖父の遺体に日の丸をかけるのはやり過ぎだろう。」




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