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『TOKAGE 特殊遊撃捜査隊』
- 2023/12/04(Mon) -
今野敏 『TOKAGE 特殊遊撃捜査隊』(朝日文庫)、読了。

テロや誘拐などの特殊な事件を専門に担当する警視庁特殊捜査隊の中にある
「トカゲ」と呼ばれるバイク部隊。
機動力を活かして、被疑者の追跡や現場の状況把握を役割としている彼らが
主人公なのかと思ったら、そこまで中心でもなく、主要登場人物という位置づけでした。

とある銀行の行員が3名まとめて誘拐され、身代金10億円を要求されるという事件が発生。
警視庁特殊捜査隊を中心に捜査本部が組まれ、
銀行本部には警視庁特殊捜査隊の主任らが前線部隊として派遣され、
捜査本部には本庁や所轄の捜査員に交じってトカゲ部隊が配置され、
全国紙社会部の遊軍記者が独自の調査を展開する・・・・・この3つの軸で
物語が進行していきます。

そもそも大の大人で思慮分別もあるであろう銀行員が3名も一度に誘拐され、
誘拐時点での目撃情報ゼロ、家族知人からの捜索届もゼロ、
10億円の身代金要求ではじめて誘拐事件が発覚するという入り口の展開に、
ちょっと違和感を覚えてしまいました。
そんなことありうる???と。

私自身、銀行ではないですが、銀行に近しい金融機関に勤めていたので、
銀行文化には親しいつもりですが、「職員が出勤してこない」という事態には、
まず「金を持って逃げた」「顧客とトラブルを起こして失踪した」という業務上の失態を想定し
かなり危機感をもってすぐに対処するイメージです。
それが、出勤してきていないのに犯人一味からの電話が来て初めて会社として動き出す
というのは何だか違和感。

というわけで、出だしでちょっと躓いた感はありますが、
捜査が始まってからの展開はテンポがよく、一気読みでした。

警察に誘拐事件を通報してから、銀行本部に警察が乗り込んできて
銀行の危機管理担当ラインの課長や常務と特殊捜査隊が向き合う形になりますが、
銀行側は形式的な協力だけで、銀行内部のことに警察から首を突っ込まれたくないという
本音がスケスケで、これは現実社世界でもありそうだなーと(苦笑)。

まぁ、銀行員の誘拐事件なんて現実世界では起こらないと思いますが、
例えば総会屋事件が起きたときに、大事になってしまったら銀行も警察に通報するでしょうが、
全ての事実をオープンにして捜査に協力するなんていう事態は想像できません。
たぶん、ヤバいところは隠しながら、面倒な総会屋の排除さえしてくれればと
警察を利用する感じになると思います。

そういう銀行特有の隠蔽体質と捜査のぶつかり合いは面白かったです。
ただ、担当常務が頭が悪すぎて、「そんな露骨な態度とったらマイナスだろう・・・・」と
引いてしまうところもありました。まぁ、守りの経営統合をせざるを得なかった銀行の役員なんて
こんなレベルなのかもしれませんけど。

そして、新聞の社会部遊軍記者の取材のテクニックも、お仕事小説的な面白さがありました。
大阪社会部の若手記者の使えなさは相当なものでしたが、
それに対する有能遊軍記者の心の声は面白かったです。

事件の真相は、まぁ、読み始めて最初に感じた違和感から想像した犯人像と近しいものでしたが
正直、仮に警察の捜査をうまく攪乱できたとしても、最終的に身代金10億円を得るのは
仕組み上、無理なんじゃないの?と思えてしまいます。

銀行の送金システムは、システム部門の中枢にいる専門スタッフとか、権限の高い地位にいる幹部とかを
仮に犯人側の味方につけられたとしても、一人でできるオペレーションには限界があると思います。
10億円なんて大金を送金するには、少なくとも処理者1名に加えて、別の権限が上の決裁者の操作がないと
処理が完結しないんじゃないかと思います。
小口の送金なら一人でも処理できるかもしれませんが・・・・。

銀行のシステムは堅牢だと本作の中でも触れられていますが、その堅牢さって、
外部からの侵入以上に、内部犯行の方に重点を置いているはずです。
あと、善意の職員の誤操作とか。
10万円の送金のつもりが10億円を送金してしまった・・・・ということがないように、
システム的な制約がかかってると思うので、ちょっと犯行計画に難があるかなぁと思ってしまいました。

まぁでも、みずほ証券のジェイコム株大量誤発注事件とか実際に起きたから、
システムの堅牢さは、金融期間によってはザルなところもあるのかなぁ。




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