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『独りきりの世界』
- 2023/10/08(Sun) -
石川達三 『独りきりの世界』(新潮文庫)、通読。

ずーっと積読になっていた本ですが、『単身急増社会の衝撃』を受けて
裏表紙の「自分の人生が女性であることに限定されているのが不満、(中略)自分自身の人生を生きようと
決意した瞬間から孤独な戦いが始まる」という文章に、こりゃ単身化まっしぐらか??ということで、
とりあえず読んでみました。

石川達三氏については、亡くなられてから時間が経ちすぎていることと
純文学のイメージがあるので、どうにも「昔の時代の作家」というイメージから抜けられず、
ベストセラー作家だったと言われても、なんだかお堅い印象が拭えません。

で、本作を読んでみると、百貨店の資料室に勤務するフランス語を操る20代女性が主人公で、
女の人生とは?結婚とは?出産とは?性とは?みたいな話を、日常生活の中で延々と考えていて、
「こんなヤツ、いるのかよー(爆)」と思ってしまいました。

もちろん、いつの時代にも、こういう概念的なことを一生懸命毎日悩んで過ごす意識高い系の人も
いるとは思いますが、この本が出版された当時は、こういう主人公の姿が一般読者に共感をもって
受け入れられたのかなぁ?という疑問が渦巻いてしまい、隔世の感がしてしまいます。

まぁ、齊藤美奈子氏の『モダンガール論』を読んでしまうと、それぞれの時代において
「先進的(笑)」とされる女性像が、時代の波という思惑により、どんなふうに捏造されてきたかが
良く分かるので、この手の主人公も、そういう「時代の波」の成果なのかなぁと
思いながら読んでました。

毎週、主人公のところに、女友達やら親戚の男やらが予定もなく飛び込んできては、
ワガママごとだったり面倒ごとだったり気まぐれごとだったりを押し付けてきて、
それに対して主人公は、「愛とは」「性とは」みたいな抽象世界へすぐに飛んで行ってしまうので、
経済が成長局面にあって世の中が浮かれているときは、こんな風にフワフワ生きてても
許されたんだなぁ・・・・と皮肉な目で見てしまいました。
とりあえず、トンデモ女がいろいろ登場してきます。

当時の読者たちは、この作品というか主人公をどういう風に受け入れたんですかねえ。
やっぱり、先進的な女の子だ、思索的で知的な女の子だと思ったんですかねぇ。
それとも、当時も、いわゆる当時の「意識高い系」の女の子という色眼鏡で見られてたんですかねぇ。
いやいや、かなり独特な世界観の主人公だということで、あんまりウケなかったんですかねぇ。

本作を書いた時の著者の年齢は、Wikiの情報から計算すると72歳ということで、
高齢男性が、20代の先進的な女性を「上手く描けてる」という評価だったのか、
そうではなかったのかも気になるところです。

作中で、自分の生活手段として早く再婚をしたいと願っている女友達に向けて、
「彼女にとって結婚は契約売春のようなものだ」という趣旨の表現が出てきて、
今、もし、高齢男性ベストセラー作家がこんなことを書いたら、それこそ意識高い系の女史から
大批判食らいそうな気もしますが、当時はどうだったんですかね?

結局、本作を通して感じたのは、愛だの性だの毎日観念的なことを考えて過ごしても
大して人間として前進しているようには思えないし、
昭和という時代は、それでも優雅に生きていけた時代だったんだなぁ・・・・・・という
ロスジェネ世代としては世知辛い感想になってしまいました。

ところでこの本、なんで私の手元にあったんだろう?
ブックオフの値札が貼られてないので自分で買ったわけではなさそうだし、
そもそも自分で買いそうなテーマではないし、
本の焼け加減からすると、父が若い頃に買って本棚に置きっぱなしになってたのかな?とも思えますが
しかし、やはり父が買いそうなテーマの本ではないですし、
かといって図書館のリサイクル本のスタンプもないですし・・・・・。
謎。




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