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『日本はこうして世界から信頼される国となった』
- 2023/09/30(Sat) -
佐藤芳直 『日本はこうして世界から信頼される国となった』(小学館文庫)、通読。

こういう日本持ち上げ本は、「日本のみが際立って凄い」というようなどこか排他性を感じてしまうものと
「他国も日本もそれぞれに良いところがあるけれど日本に関してまとめると・・・・」という感じの平和なものと
2種類あると思うのですが、前者はマウントとるような感じがして苦手です。
本作は、著者がコンサル出身ということだったので、そのあたりは冷静にフラットな目線かなと思い
買ってみたのですが、うーん、どちらかというと前者のような・・・・・。

例えば、エルトゥールル号の難破事故の話は有名ですが、
和歌山の漁民たちは、著者が表現する「日本人として取るべき道」というような意識は
無かったのではないかと思います。敢えて言うなら「人間として」というような近代的な考え方も
無かったように思います。
ただただ、目の前で溺れている人が居たから、海っ端に住むものとして当然助けに行った、
それだけのことではないかと思います。

「日本人」という民族意識や国籍意識、さらには「人間として」というような近代的自我みたいなものは
まだ日本の多くの人は持ち合わせていない、狭いコミュニティ意識の中で暮らしている時代だったのでは
ないかと思います。

しかし、江戸時代から日本は、女性一人でも旅ができるような治安が確保され、
だからこそ多くの人が街道を行き交い、漁村にも行商の人が出入りしたりして、
顔の知らない人物が村にやってきても、不安に感じることはなく、
穏やかに交流するという文化か醸成されていたのではないかと思います。

そういう土壌のもとで、死のリスクに直面している人が目の前に居たら、
できる限り助ける努力をする、それが異国の人でも困っていたら助ける、
そういうお国柄が生まれたのではないかなと思っています。

コンサルだから冷静な文章になるかと期待したのですが、
むしろ、歴史学者や郷土史家のような、歴史の流れをきちんと掴んでいる人の方が、
文章は人情的でも、分析は冷静なんだなと思い直しました。

本作は、Amazonでは評価高いですが、私は、歴史上の出来事をうまく利用して
日本を称賛するるための文章を作り上げたという印象を持ってしまいました。
結論ありきで、歴史上の出来事の描写を都合よく描いているような。

「日本は昔から法を守ることで定評のある国だった」と書かれていますが、
渋沢栄一が「論語と算盤」で、利益だけでなく倫理も説いたのは、
その当時の日本の商業慣習が海外に信用される水準になかったからだと
何かで読んだ記憶があります。(Blog見返しましたが何で読んだか定かではありません)

あんまりキレイゴトで歴史を飾ってしまうのは、根拠のある自信とは別の、
変な意識が日本人についてしまうようで、あまり良い傾向だとは思えませんでした。




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