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『東大が倒産する日』
- 2023/09/17(Sun) -
森毅 『東大が倒産する日』(ちくま文庫)、読了。

タイトルから、国立大学の独立法人化という局面において、
東大をはじめとする京大、阪大などの有力な国立大学の経営のあり方について
物申す的な本かなと思って買ってきたのですが、
その話もありつつ、学生の質の変化とか、試験の採点作業に対する思いとか、
いろんな話が語られているので、ちょっとタイトルは編集者が釣り過ぎな感じがします。

内容としては京大の話なのに、タイトルに東大を付けてしまうのは、
編集者の売らんかな根性だと思いますが、著者はきっと望んでないことだと思いますし、
森毅ファンだったり京大ファンだったりも望んでないことだと思いますし、
タイトル通りの内容を期待して買った人も裏切られてしまうという点で、
あんまり良い編集方針ではないと思ってしまいます。
祖父は森毅ファンかつ京大ファンだったので、本作のタイトルを知ったら憤慨しそうです(苦笑)。

さて、内容ですが、豊田充氏がインタビュアーとなって
著者のざっくばらんな飾らない言葉で、大学教育にかける思いが記録されています。

祖父が京大ファンだった理由は、日本一の東大の真面目さやお堅さ(立場が立場なので仕方ないですが)
に対して、個性を尊重するユニークな大学の方針で、ノーベル賞受賞者の輩出など
素晴らしい業績を出しているという点でした。
そして、森毅先生は、その京大の良い面、もしかすると悪い面も含めて
一人の教育者として体現しているというところに祖父は感銘を受けていたのだと思います。
もちろん祖父が数学マニアだったというところもあります。

本作で、京大の入学試験における採点基準を設けているものの、
実際に答案を採点し始めて、採点基準には無かった要素が答案から見えてきた場合は
基準を事後変更して、もう一度最初から採点をし直すというエピソードは、
京大の個性重視のユニークさ、教授陣が学生の意見も尊重している精神性を
象徴的にあらわしているのかなと感じました。
当初の予測とは外れた反応が返ってくることを、嬉しがってるようにさえ思えます。

そして、「ニセ学」のススメ。
「ニセ学」とは、受講申請していない授業を黙って見に行くこと、
京大生以外にも、学外から無断で授業に参加することを指す言葉だそうで、
私の母校には無かった言葉です。
時代のせいかも知れませんが、一橋大は、他学部の授業を取ることを視野を広げるという点で
推奨されていたようなところがあり、正式な単位もくれました。
なので、私は社会学部でしたが、法学部、商学部の授業は取ってました。
経済学部は、わたくし経済学オンチなので取る勇気が出なかったですが(苦笑)。

ただ、森先生が指摘するように、こうやって制度化してしまうと、
逆に単位取得が認められた他学部の授業は取りますが、
認められない授業(専門性の高い授業や、一定の授業の単位取得後でないと受けられない授業とか)は
最初から関心の外に置いてしまっていた気がします。
単位くれなくても、黙って覗きに行くことはできたのに、したことがなかったです。
世間的に有名な教授の授業は、単位関係なく、1回でも聞いておけばよかったなと後悔してます。
その分、卒業後にOB会で行われる人気教授陣の講座には良く通いましたが。

森毅先生みたいな、ご意見番的な大学教授って、今、誰がその座を引き継いでるんですかね?
山中伸弥先生ですかね?内田樹先生ですかね?
前者はまだまだ研究者としてバリバリですし、後者はSNSでの左翼傾倒が強すぎて
世間的にウケが悪いような気もしますし・・・・・。
ちょっと大学教育もこじんまりしちゃってる感じがありますね。




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