『水辺のゆりかご』
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- 2007/10/21(Sun) -
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柳美里 『水辺のゆりかご』(角川書店)、読了。
「柳美里」がどのようにして形成されたのかを辿る自叙伝。 読み進めるたびに気持ちが沈殿していくのですが、 読み止めることができず一気読み。 大人社会・子供社会を冷静な目で見つめ、 時に非常にシニカルな物言いをする少年少女を主人公とする作品が好きで、 これまでにいくつかの作品を読み、楽しんできました。 しかし本作は、「楽しむ」という余裕を与えてはくれませんでした。 作家本人=主人公が真正面から読者に挑んでくるような 圧迫感を受け続けたような印象です。 いじめ、家庭内のいざこざ、家族のルーツの闇、 あまりにも困難な問題に、この主人公は立ち向かわざるを得ない状況に置かれ、 わずか3歳にして、自分が置かれた環境を悟ってしまっていたかのように思います。 「柳美里は早死にするのではないか」と解説で林真理子女史が危ぶんでいますが、 まさに、生まれた時から大人の目線を身につけさせられた少女は 二十歳になるまでにどれだけのエネルギーを使い、奪われたのか。 激烈な半生を見せつけられて、こちらのエネルギーも摩耗したような感覚に とらわれました。 それほどパワーを持った作品でした。
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