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『マル暴甘糟』
- 2023/07/03(Mon) -
今野敏 『マル暴甘糟』(実業之日本社)、読了。

阿岐本組シリーズに登場する、マル暴担当刑事の甘糟巡査部長が主人公のスピンオフ作品。

夜勤当番中に発生した駐車場での殴打殺人事件の被害者が暴力団組員だったということで
現場に駆り出され、そのまま捜査本部に招集されることに。

捜査本部を仕切る警視庁捜査一課の面々は、半グレの仕業とみて捜査を進めますが、
甘糟とその上司の郡原巡査部長は、暴力団間のトラブルではないかと疑い
独自に暴力団たちを張り込み始めます。

一般的な警察小説だと、主人公たちは捜査本部に隠れて勝手に動いたりして
リアリティないなぁ・・・・・と思うことが多いのですが、本作では、きちんと捜査本部の管理官に
「マル暴担当だからこそ追える情報を追います」と郡原がちゃんと断りを入れて、
管理官の了承の元で行動に移しているので、こういうところが読んでて納得感が高いんですよね。

主人公の甘糟は、暴力団事務所に様子見に行っても、威圧するのではなく
「お茶なんか出さないでよね」「捜査情報なんて教えられないよ」「なめないでよね」という
気の弱そうな言い回しで、でも断るところは頑なに断るという、
暴力団からすると扱いにくそうな刑事像で、最後までキャラがぶれないので
そこも安心して読める材料になっています。

そして、本作で一番面白いと感じたのは、マル暴刑事の目から見たヤクザの手口の数々。
相手が口をなかなか割らない時は、あえて沈黙して相手の次の言葉を待ったり、
矢継ぎ早に質問する途中で急に別の角度の話を振って口を滑らせるようにもっていったり、
こういうテクニックを解説してくれるので興味深いです。

事件の真相は、暴力団・任侠団体という、裏社会ではあっても裏社会なりのルールの下で
警察ともある種の関係を保ちつつ存在している反社組織と、そこには属さない
本当の意味での反社会的というか脱社会的な組織の半グレ集団との
文化の違いのようなものを見せてくれるものでした。

半グレの行動力というか、犯罪を描く頭脳を持ち上げ過ぎな気もしましたが、
任侠団体の立場というか面子というか、そういう文化を象徴的に見せるには
面白い物語だったなと思います。

裏表紙のあらすじに「阿岐本組の面々も登場!」となってましたが、
どこに出てきたの?と記憶なし(苦笑)。




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