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『嗤う名医』
- 2023/06/07(Wed) -
久坂部羊 『嗤う名医』(集英社文庫)、読了。

久坂部作品は2冊目。
やっぱり読後感は不快なものが渦巻きます(苦笑)。

ジャンルとしては医療系社会派ブラックユーモアなのでしょうけれど、
私としては毒が強すぎて、医療社会というか、人間が嫌になっちゃいます。

最後に収録された「嘘はキライ」が、大学病院における教授ポストの争奪戦がテーマ。
ドロドロとした足の引っ張り合いの中で、教授候補のどちらの陣営にも属さない主人公は
自分なりの判断で行動し、ある種の悪を追い出すのですが、
この爽やかさのある作品が最後に置かれているおかげで全体の読後感は
なんとなくいい感じで終わりますが、でも、その前5作品はグロすぎ(苦笑)。

患者は自分勝手だし、認知症は人間性を破壊するし、
医師は高慢で全能感に浸ってるし、純粋な生物学への興味は偏執的でもある。
どれも、人間の歪みみたいなものが、医療という命の限りと向き合わざるを得ない場で
極端に膨張して表出されるので、嫌な気持ちになっちゃいます。

そして、この人間性のグロい部分を誇張して書きたいがために、
ちょっとリアリティのない展開になっちゃってるのも気になりました。
「愛ドクロ」で、大学医学部の解剖学教室に勤務する技術員が、
身の回りに居る女性・幼女の中で頭蓋骨の形の良い人に偏執狂的に執着する話ですが、
多くの人間が住む社会の中で、この主人公のように極端な嗜好を持ち
行動にまで移してしまう人は、まぁ存在するかもしれません。
でも、その友人までもを巻き込んで、しかも一緒に「行き倒れの死体を見つけに行こう!」と
近所をウロウロするところで、「おいおい、友人よ、止めてやれよ、というか怖がれよ」。

え?なんでそんな行動を受け入れるの?という展開がところどころにあり、
そこは読んでいて気持ちが冷えちゃいました。

うーん、自分には合わない作家さんなのかな。
でも確かまだ積読になってるものがあったはず・・・・・・。




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