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『人間はすごいな』
- 2023/03/12(Sun) -
日本エッセイスト・クラブ編 『人間はすごいな』(文春文庫)、読了。

日本エッセイスト・クラブの2011年度版ベストエッセイ集。
2010年度版を以前に読みましたが、同じように本魚が物書きの人から主婦まで
様々な立場の人が書いたエッセイの詰め合わせです。

物書きさんのエッセイは、やっぱり最初に作者名が目に入ってしまうので、
ちょっと読む側もある種のイメージというか思い込みを持って読んじゃいますね。
「こんな作品を書く作家さんだけど、さて、その人の年間ベストエッセイとは何ぞや!?」と。

そういう目で見ちゃうから、あんまり素直に楽しめないのかなぁ・・・・。
内田樹先生とか、著作は大好きなのですが、本作に収録されたエッセイは
左翼的思考にかぶれて退学する様子を語ったものでした。
エッセイでは自主退学という形で書いていますが、「へー、高校退学してるんだ」と思い
Wikiで裏取りしたら、どちらかというと「素行不良で退学処分」というニュアンスの書き方で、
「自主退学と退学処分ではえらい違いではないか!?」とモヤモヤ。
当人からしたら世界の激動の中での自分の行動だったのでしょうけれど、
高校側から見たら単なる問題児だったのかな。
このエッセイに象徴されるように、著名人のエッセイはいまいち楽しめず。

唯一心に残ったのは、楊逸さんの「犬と棒」。
「犬も歩けば棒に当たる」のことわざを引き合いに出して、
「あなたは犬?とれとも棒?」と問いかけます。
このことわざで、自分を「棒」側に据える視点って、私は全く持っていませんでした。
そうか、自分が災難に遭遇するパターンばかり考えていたけど、
自分が誰かにとっての災難になっちゃってる場合もあるのか!と、目からウロコこでした。
その導入部から、「ウソついたら針千本飲~ます」となり、中国共産党の文化大革命へと
話が展開していきます。
この流れるような世界観の広がりというか変転が、素晴らしいです。
芥川賞受賞作へのイメージから、まだ受賞作の『時が滲む朝』は読んでないですが、
こりゃ読んだ方が良いかな。

一般人の方のエッセイは、その着眼点や、肩ひじ張ってない感じの日常生活の切取り方が
爽やかに感じで楽しく読めすものが多かったです。

山登りを趣味にされている方が、日本百名山の踏破を目指す終盤の山行を描いたエッセイがあったのですが
現地のツアーガイドの指揮のもと、現地で知り合ったツアー参加者たちの山での様子が
素直に描かれていて、「あー、こういう人いるよなー」という気持ちで読みました。
私はスキューバダイビング派なので山行は全くの素人ですが、
プロガイドのもとで、その日のツアーに参加した知らない人たちが一緒に行動するというスタイルは一緒です。
みんながガイドさんの言うことをきちんと聞けば良いのですが、結構、ワガママなんですよねー。
自分のペースで勝手に行ってしまう人とか、自分の能力への自信からガイドが苦笑するような動きを
しまてしまう人とか。
あるあるだなー、と思いつつ、私はガイドという仕事はできないなと、ガイド業の方に感嘆。
多少のワガママには目をつぶりつつ、リスク管理のためはみ出す人にはやんわり注意し
角が立たないようにうまくまとめていくという、これは人間力と胆力がないとできない仕事ですわ。
こういうプロの仕事が垣間見えるのも、素人さんのエッセイの良いところですね。




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