小山良太、小松知未 『農の再生と食の安全―原発事故と福島の2年』(新日本出版社)、通読。
メインタイトルから、日本の農業の一般的な本かなと思って
あんまり考えずにドカ買いしてくる際に買ってきたのですが、
今回読み始めたら、福島の原発問題に絡めた農業の問題の話でした。
よく見たら、サブタイトルに「福島原発」って入ってるし、
帯にも「放射能問題への挑戦」と書かれてて、どんだけ適当に本をカゴに入れちゃってるんだ!?と
本選び力を反省。
3.11の福島原発事故により発生した放射能汚染で直接的な損害と風評被害を受けた
福島県の農業をどのように復活させていくかという具体的な取り組みを
現場からレポートした本。
読みながら感じたのは、どれだけ農家の方たちや、JAや学者がまじめに真っ当な取り組みを進めても、
農産品を買う消費者の側に科学的なリスク評価のリテラシーがないと、
残念ながらその努力の多くは無駄になってしまう可能性があるということ。
例えば、放射能の安全基準について考えると、「この基準値が正解です!」という絶対的な解が
得られる可能性は少ないと思うんです。
結局、人間の判断で、「えいや!」でどこかに線引きをする必要があり、
一旦決めたらそれで運用してみるというところに社会の合意ができないと、何も進まないんですよねー。
被ばく量基準の「1年間で50ミリシーベルト」というのも、「なんで30じゃなくて50なんだ」
「100にあげても大丈夫なんじゃないか」みたいな議論を突き詰めても、
論理的な結論は導けないと思うんですよね。
「過去の事故の経験から」とか「動物実験による結果から」とか
そういう統計的な方法で「50」って決めることになっていくと思います。
そこに「50であることの論拠」を求めると、なにも決められなくなってしまうという。
3.11の後の世論を見ていると、今までよりも事故のインパクトが大きかったというか、
「そこに住めなくなる」という一般市民への影響が目に見える形で生じたことで、
反原発や脱原発の動きが具体的に起こり、声も大きくなりましたが、
正直、私からすると、過去にも東海村の臨界事故で死人が出てるじゃない、
もんじゅ事故で放射能は漏れたじゃない、その時は凄く騒いでたけど
結局時間がたったら興味を無くして、原発は3.11まで普通に稼働してたよね、
だから今は騒いでるけど、岸田首相の指示通り、原発再稼働は進んでくんじゃない?と思ってます。
私は、原発を作っちゃった以上、もったいないから使い切ったほうがいいと思うし、
原発コントロール技術のレベル維持のためにも若い研究者が一定数行きたくなる業界であるべきだと思うし
中国や韓国の原発に対する監視の目を持つためにも、日本の原子力研究は維持した方がいい
と思っているので、原発再稼働の方向性には賛成です。
反原発や脱原発の人、そして、そこまでいかなくてもボンヤリと原発怖いって感じている人、
みんな、例えば高木仁三郎氏の著作を読んで、
冷静に批判する目を持つべきだし、正しい科学知識に基づくリスク評価と、
適切な政治プロセスにのっかった中身のある議論をして国策の方向性を決めるべきかなと思います。
岸田首相の進め方はやや強引なようにも感じますし、
反対派の反対論法は議論が成り立たないので無力感を覚えます。
福島の方たちが一生懸命に行動をし情報発信をしていることが無駄にならないよう、
正しい科学知識で原発を評価し、福島産の農作物を評価できる社会になるべきだと感じました。


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