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『沿線風景』
- 2023/01/26(Thu) -
原武史 『沿線風景』(講談社文庫)、読了。

ブックオフにて、「首都圏の路線をめぐる散歩エッセイかな~?」ぐらいの
軽い気持ちで大して内容を確かめずに買ってきたのですが、
日本政治思想史が専門の学者さんによる乗り鉄&書評エッセイという、
なんだか凄く複雑な背景を持つ作品でした(苦笑)。

最初の舞台が、東武伊勢崎線なのですが、
沿線の小さな駅の正面にある本屋がレディコミックスと成人雑誌ばかりの店だったことから
「人目を忍んで団地妻がレディコミを買っている姿を想像してしまった」とか
この本屋を「東急沿線ではまずお目にかかれない書店を見つけたわけだ」とか
なんだか上から目線の鼻につく表現が気になってしまいました。
著者は、東急田園都市線沿線に30年以上もお住いのようですが、
う~ん、いきなりマウントが凄いな・・・・・と。

この調子でエッセイが続くならしんどいな・・・・と思ってしまいましたが、
電車に乗りながら、その景色や出会った事柄と結び付けて紹介される本の数々が
結構、政治的なものだったり、学術的なものだったりしたので、
学者センセなら多少浮世離れしてても仕方ないか・・・・と慣れちゃいました(苦笑)。

著者は、『昭和天皇』『大正天皇』などの著作があるようですが、
中身は本作で触れられている以上には、私自身読んでいないので分かりませんが、
本作で三里塚へ行き「感慨深い」と述べているので、やっぱり左翼的な思想なのかなと思いつつ
でも、そういう考え方がドギツク作中の文章に現れてくることはなく、
むしろ、同じタイトルの『昭和天皇』という本を同じ頃に出版した福田和也氏と
本作の企画で一緒に電車に乗ってお出かけしているところを見ると、
結構、柔軟なスタンスで天皇制に向き合ってる人なのかなとも感じました。
とりあえず、もし100円で見つけたら読んでみよう。

本題の沿線歩きで気になったのは、天皇家に関する場所を巡るのと同じくらい出てくる
新興宗教の本山や出家施設などの話。
特に、JR立川駅から直行バスが出ているという真如苑の宗教施設「応現院」の話にびっくり。
わたくし、学生時代に国立市在住だったので、立川にも良く行きましたが、
「そんな新興宗教の話、知らんかった!」と思ったら、どうやら2006年にできた様子。卒業後でした。
そんな信者しか乗ってなさそうなバスに平気で乗っちゃうとか、
やっぱり学者さん、浮世離れしてるわ(笑) ← これは誉め言葉

他にもオウム真理教や大本教などが出てきて、
あー、戦後の日本の国家統治の仕組みの中に、カルト的な要素は結構重要だったのかも・・・・と
改めて感じました。この辺は、著者の他の著作を読んだ方が良さそうです。

22本の小旅行の話が収められていますが、そのうち1本だけポーランド旅行記が含まれており、
「これらの都市に比べると、ワルシャワの郊外は、はるかに東京の郊外に似ていた」と、
西欧やアジア諸国の各都市と比較した感想を述べており、
やっぱり日本は「成功した社会主義の国」だったのかなと思いました。

軽いエッセイを読むつもりが、小難しい話が多い読書となりましたが、
著者の着眼点が面白い本でした。








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