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『ちょっと今から仕事やめてくる』
- 2022/12/28(Wed) -
北川恵海 『ちょっと今から仕事やめてくる』(メディアワークス文庫)、読了。

タイトルから推察できるように、今時の若者がブラック企業を辞める話。

私も一応、数年前まではサラリーマンをやっていて、ずっと企画部門だったので、
仕事の状況によっては夜中2時3時まで仕事をしてタクシーで帰ったり、ときには会社で夜を明かしたり、
土日も出勤して20連勤とか平気でありましたが、正直、あんまりブラック感がなかったんですよねー。
上司の指示とかじゃなく、自分の意向で「もうちょっと、ここ頑張ったら、より成果が上がるんじゃない?」
みたいな感じで、最低限の求められているライン以上のことを自ら望んでやろうとしていたので。

そういう、ある種、ワーカホリック的な症状のある自分からすると、
「ブラック企業で心身ともに疲弊する」という状況が、あんまりリアリティをもって考えられないんですよね。
世間の常識からすると、私の働き方は頭おかしいと糾弾されるのだろうと自覚はしてます(爆)。
でも、成果が上がるから楽しいんですよねー。

仕事相手が米国のベンチャー企業だったりしたので、相手方も異様な働き方をしていて、
お互いに感覚が麻痺しているのだとは思いますが、
土日だろうが夜中だろうがメールのレスがすぐに返ってくるので、リズムとスピード感が心地良くて、
仕事が楽しかったです。
やればやるだけ業績が上がって評価されるので、達成感もありました。

でも、一応、一般企業なので、人事部とかが、「労働基準法を守ってください」
「産業医面談を受けてください」「とにかく帰りなさい!」みたいにうるさく、
こちらも出退勤記録をいかにごまかすかみたいなところに知恵を使いだして、
仕事そのものよりも、労務管理対策がストレスだったんですよねー。
で、会社を辞めて独立起業し、経営側なので今や仕事したい放題です(爆)。

本作で描かれるような、「毎日毎日、会社にこき使われて、働けど働けど状況が好転しない」
こういう仕事環境に置かれたことがないので、読んでいてピンとこないんですよね。
成果を出したら評価されてよりやりがいのある仕事が振られるし、
失敗したら反省の意味を込めて別な仕事に変えられて、
その別な仕事でちゃんと成果を出したら、また一つ上のレベルの仕事が与えられる。
そういう、成果評価がきちんとした会社だったので、納得度が高く、ブラック感がなかったのかなと。

あとは、一定程度業績を上げていれば、役員クラスの方たちと飲み会の席とかで
フランクに話をする機会もあったので、「今の会社のこういうところ変えられないですかねー」みたいな
提案というかアイデア出しというか、半分は笑い話に紛らせつつも直言できたこともあり
それが役員に刺されば手を打ってもらえたので、「自分が辞めるか否か」みたいな個々の話よりも
「会社をどう変えたらよいのか」みたいな根本解決のような話の方に関心が向かってしまうので、
本作のような個人の話に興味が持てない理由なのかなと思います。

また、課長や部長に対して降格人事が普通に行われる会社だったので
(不祥事だけでなく、計画未達だとか、部下からの評価が極端に悪いとかの理由で降格になってました)
本作に出てくるような、意味もなく怒鳴り散らす上司とかが居なくて、風通しは良かったように思います。
課長から係長に降格になった人でも、また成果を出したら課長になってましたし。

結局、会社がブラックかどうかって、何時間働いているとか、休みが取りにくいとかの
形式的な部分ではなく、その会社が成長軌道に乗っていて社員全体が前向きなマインドにあるか
というような気持ちの部分が大きいような気がします。
私が居た会社で、右肩下がりの経営状況で長年汲々としている・・・・というような時期はなく、
ちょっと将来展望が見えなくなっていた時には、経営陣の英断でM&Aやっちゃいましたから
私たち社員はM&Aを成功させるのに必死でした。不満や不安を持つ余裕なし。
もし、経営陣がM&Aのような大改革を決断できずに、ただ右肩下がりの未来があるだけだったら、
業績の下げ幅を小さくするためだけの仕事にこき使われてブラックだと感じたかもしれません。

というわけで、本作での主人公やヤマモトの奮闘は、正直あんまり心に刺さりませんでした。
それよりも、主人公が自分の新卒時代の就職活動を振り返って、
「簡単に、安易に、就職先を決めてはいけなかったんだ」と反省したシーンに最も共感を覚えました。
結局、どんな会社、どんな組織、どんなコミュニティに就職するかが
自分の人生に大きな影響を与えるのではないかと、本作を読んで再認識しました。
そして、最後は、人間です。どんな人と一緒に仕事をするのか。
その点で、私はとても恵まれていたと感謝しています。

世間では、本作の主人公のように、悩み苦しんでいる人がたくさんいるんだろうなということは
もちろん頭では分かっているのですが、私には、その悩んでいる個々の人たちに向き合う能力や才能が
ないんだろうなということを、本作を通して実感しました。
私が取り組むべきは、制度面の見直しへの提言とか、そういうところなんだろうなと。
向き不向きを再認識する読書となりました。




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