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『県庁そろそろクビですか?』
- 2022/10/23(Sun) -
円城寺雄介 『県庁そろそろクビですか?』(小学館新書)、読了。

「他に就職するところがない」という消極的な理由で佐賀県庁に入庁した著者。
最初に配属になった県土木事務所での用地買収の仕事を皮切りに、
行く先々の部署で改革的な政策に取り組む様子が描かれています。

最も目立つ功績は、佐賀県内の救急体制にiPadを用いた情報管理システムを
導入したことかなと思いますが、何よりもすごいと思うのは、
その課題が組織の上から与えられたものではなく、自分で課題を設定し
解決方法を想定し、現場に説明し、導入に向けてまさに一人で動かしてきたということ。

私は、現在、地方行政組織と仕事をすることが多いのですが、
正直、「計画にない」とか「予算が計上されていない」とか「前例がない」とか
そういう物事に対して、非常に腰が重たくなるんですよねー。
「改善すればよくなる」ということまでは理解してもらえても、実行となると、壁が凄くて・・・・・。

また、自分が会社員だったときのことを思い返しても、
下から「こういうことをやるべきです!」と上にあげていくのは、かなり大変です。
私も、いろんな仕事をやらせていただきましたが、ほとんど社長から「こういうことをやりたい」と
方向性の指示があり、それを受けた部長経由で課長に下り、課長から私に指示がくるという
そういう流れでした。

担当者として、仕組みから運用まで結構好きなように計画させてくれる
会社で、しかも社長プレゼンも部長や課長は横にいるだけで担当自ら説明できる会社だったので
社長が示した方向性からは外れないようにしながら、自分のやりたいことも上手く混ぜ込んで
好きなようにやらせてもらってました。
あとは、年度事業計画を書く担当もしてたので、社長や各担当役員から出てきた施策について
自分が思うような方向にちょっと表現をアレンジしたりしてましたが、
自分で「来年はこれをやるべきです!」と役員に提言したことはなかったかなぁ・・・・。

本作では、救急の話であれば、消防隊や救急病院スタッフなど現場の方たちを
改革の取り組みの中にいかに取り込んでいくのか、また彼らの意見をいかに反映させるか、
そういう周囲の巻き込み方のエネルギーは凄いなと正直に感嘆しました。

一方で、県庁内部で、県の計画にない施策をいかに承認されるようにもっていったのか
内部調整の話はほとんど出てこなかったので、正直、ほんとに計画にないことを
著者が提案して実現していったのかな?もともと上層部に課題意識があって
施策としての盛り込みタイミングを見計らってたんじゃないのかな?というように
若干疑いの目も持ってしまいました(苦笑)。天邪鬼ですみません。
でも、外部の巻き込みと同様に、内部を正式手続きに則って通すことも重要なので
両輪で描いてほしかったなと感じました。

また、現場第一主義という描き方をしており、実際にそういう行動指針で動いてますが、
県庁の指示で、元三重県知事の北川正恭氏が率いる「人材マネジメント部会」に2年参加して
地方行政改革の思想体系なり人脈づくりなりにきちんと取り組んでいて、
しかもドラッカーやクリステンセンなどのビジネス書もいろいろ読んでいるようで、
現場一辺倒ではなく、きちんと体系的知識を身に付ける努力をしているところが
スーパー公務員だなと思います。

あと、佐賀県庁側も凄いなと思うのは、これだけ現場で実績を出している著者を、
その現場に長年置きっぱなしにして「この人じゃないと回らない・・・・」というような
状況に陥らせることなく、3年おきにちゃんと配置換えをして、
その能力を、各現場で最大限に活かそうとしていることです。
私の住む地元の自治体では、実績をあげて市長に気に入られると、そのポジションに
何年も固定化される傾向にありますから、なんだかなーです。




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