『戦争にチャンスを与えよ』
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- 2022/10/21(Fri) -
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エドワード・ルトワック 『戦争にチャンスを与えよ』(文春新書)、読了。
ブックオフの新書100円棚でドカ買いして来た時に、 「このタイトル、どういう意味なの?」と不思議に思い、とりあえず買ってみました。 著者は、国際政治学者という肩書で紹介されるようですが、 米戦略国際問題研究所の上級顧問ということで、学者というよりも、政策提言者という感じの 象牙の塔ではなく、現実社会にどっぷり漬かったところで国際政治を分析している 人なんだなということが、数ページ読んだだけで理解できました。 そして、タイトルの謎。これは、戦争を中途半端に止めるようなことをすると お互いの怒りが継続し、戦力も維持され、近いうちに再び戦争が起きてしまう。 それよりも、戦争を徹底遂行させ、勝ち負けを明確にした方が、 その後の社会は平和になる、という、なかなか衝撃的な提言でした。 超リアリストな人ですね。 しかし、太平洋戦争でボコボコになった後、奇跡の復活を遂げた日本のことを考えると 「負けた、世界にはもっと強い国がある、植民地政策ではなく経済政策で繫栄を目指すべきだ」 と本人自身が自覚し、反省し、将来像を戦争以外の道に定めることで、 その後の平和的な社会再建が進んだというのには説得力があります。 朝鮮戦争は停戦合意という形で終えてしまったので、未だに38度線があるし、 韓国の徴兵制の仕組みなり、北朝鮮を警戒するために一定のリソースを割かないといけない という事態は、国の繁栄のためにはマイナスに寄与しているように思います。 さらに、難民キャンプを安易に作り上げ、支援するふりをして戦争の被害者を拡大させている NGOなどの活動の在り方にも警鐘を鳴らしています。 まぁ、所詮、ボランティア活動もビジネス活動も、すべては自己満足のためですからね。 自分が正しいと思ったことが、すべての関係者に正しいと思ってもらえるわけではなく。 最近の社会を見ていると、20年位前までは、戦争被害者の支援なり 戦争行為自体の支援なり、そういうことができるのは国家規模の大きな組織だけだったと思います。 しかし、情報通信網が発達し、交通機関も発達し、集金システムも発達し、 小さな組織がSNSなどを活用して、クラウドファンディングをして戦争の現地で何らかの活動をしたり また、その活動報告を広くPRして支援を一層集めたり、反対に非難を集めたり、 いろいろできるようになってしまいました。 結局、その組織なり個人なりが、どのくらい広い視野で国際社会のことや 戦争被害者の将来にわたっての長期的な視野で物事を考えられているかということが 良い効果を引き出すのか、悪い結果となってしまうのかの分かれ道だと思うのですが、 国家規模だと、当然、多くの人口の中から優秀な人が政治リーダーなり官僚なり 著者のような政策提言者なりになっており、視野の広さや長期性を一定確保できそうですが、 それがNGOのような小さな組織になってしまうと、限界がありますよね。 まぁ、国家でさえも良く間違った判断をするので、国家だから安心というわけではないですが。 現在のロシアによるウクライナ侵略について、著者はどんな発信をしているのかな?と ちょっとネットで探ってみましたが、有料記事が多くて読めず(苦笑)、 とりあえず上念さんが『月刊Hanada』に掲載された著者のインタビュー記事を解説していた 動画を見てみました。 なるほどねー。 長谷川幸洋さんとか、ルトワック氏の見解に触れたりしてないかしら?今度、動画探してみよ。 安倍政権がいかに、米露をはじめとする大国の首脳から信頼されていたのかということも 米国側からみた見解と、米国目線で観察したロシアなどの動向から述べられており、 あぁ、やっぱり安倍さんが若くして居なくなってしまったのは日本にとって大きな喪失だなと再認識。 そして、本作で著者は、日本の近代戦争だけでなく、戦国時代の武将についても言及しており、 ものすごく博学だし、インタビュー相手の国に敬意を払っている人なんだなと感じました。 インタビュアーの奥山真司氏の能力が高いという点もあるかと思いますが、 読者に興味を持ってもらえるように工夫し、自分のメッセージをしっかりと受け取ってもらえるように 最大限の努力をさせているところが、やっぱり戦略家としての凄さですね。 ビジネスマンとしても学ぶべきところが多そうです。 ![]()
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