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『逆説の日本史10 戦国覇王編』
- 2022/08/24(Wed) -
井沢元彦 『逆説の日本史10 戦国覇王編』(小学館文庫)、読了。

第9巻が面白かったので、さっそく第10巻。
一巻使って、信長の天下統一の大局観を解説しています。

信長の改革者としての非凡ぶりは、第9巻で本質を書いちゃってるので、
第10巻はそこまで強烈な印象を残すものではなく、やや枝葉末節感はありましたが、
当時の宗教勢力である「一向宗」「法華宗」などに対する解説は面白かったです。

本作では、著者は相変わらず、歴史学者の宗教オンチぶりを批判しており、
当時の宗教勢力の武装状態とか強欲さとか理解すべきだという指摘なのですが、
わたくし、20年以上前にそう習った記憶があるんですけどねー。

中学校での社会の授業における日本史の学習は、確かに通り一遍だったように思うのですが、
高校の日本史の授業では、ある程度、当時の「僧兵」などの位置づけについて
ちゃんと説明してもらったような気がするんですけどねー。
今の感覚でいう「坊さん」とは違うぞ!武蔵坊弁慶みたいなヤツを想像しろ!みたいな。

うーん、教科書では通り一遍な説明だったのかなぁ?
大学受験用のマニアックな夏期講習・冬季講習で記憶が上書きされちゃったのかなぁ。

本作では、信長が本能寺で亡くならずに、もしもその後に天下統一に向かっていけたら
ニ三年のうちに達成できていたのではないかという想像も巡らせていますが、
では、その後の日本、特に二十一世紀の日本は幸せだったのですかね~。

信長の、世界に広く目が向いた政治経営がなされていたら、
もしかすると大航海時代の世界の競争に真正面から巻き込まれて
大変なことになっていたかもしれませんし、
そうなると、今、日本という国があったかどうかも定かではないですしね。

信長の偉業や大局観のずば抜けた内容はたしかに著者のおっしゃる通りですが、
信長が政治のトップで指揮をとれたのも、長くて人生80年でしょうから、
その後継が育ってなければ、どんなに国家改革をしても、次の代で倒れますよね。

秀吉や家康といった、同じく優秀で国家観をもった武将が足元にいたから
その後、江戸幕府の安定した治世のもとでの国家繁栄というものがありましたが、
では、織田家の子孫のデキはどうだったのかというとイマイチな気がします。

優秀な人物は、優秀な教育者とは限らないという
そういう感想を持ってしまう巻でした。

いろんな制約がある中で、できる限りの謀略を駆使した足利義昭は、
むしろ凄い人物なのかもしれませんね。




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井沢 元彦 (著) 小学館 (2006/6/6) 井沢元彦の『逆説の日本史』シリーズの信長編。 信長の改革者としての面や宗教に関して誤解されがちな部分、権威を持つためにしてきたことなどについて書かれている。 序盤では「連立政権」を組んだ足利義昭との対立の話で、軍事力と賞罰権を持つ信長と、権威を持つ義昭の対立構造について書かれている。 信長が残虐というイメージがあるのは義弟だった浅井... …
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