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『MBA経理課長 団達也の不正調査ファイル』
- 2022/07/25(Mon) -
林總 『MBA経理課長 団達也の不正調査ファイル』(日経ビジネス人文庫)、読了。

小説仕立ての会計実務を解説した本。
日経ビジネスオンラインの連載企画だそうです。

この手の小説仕立てのビジネス本はいろいろ出てますが、
他の著者のシリーズよりも小説としての書きぶりがそれなりに様になってて、
ストレスなく読めました。

シンガポール大学ビジネススクールでMBAを取得した主人公は、
並みいるコンサル企業からのオファーを蹴って、恩師の勧めに従って
日本の中規模部品メーカーに就職します。

創業者が亡くなり、社長を継いだボンボンは優柔不断で経営判断ができない。
そのためいとこで銀行勤務だった優秀な男を専務に引き入れますが、
次第に専務が経営権を握るようになり、専横的な行動を隠さなくなってきます。
そんな状況で経理課長として就職した主人公は、
社内に蔓延る不正を見つけて糾弾していきます。

メーカーだからこそ可能な仕掛品の過大評価とか
仕入販売で労力なしに売上を底上げできる循環取引とか、
具体的にこうやってやるのかぁ・・・・・と変な実務が勉強になりました(苦笑)。

現場に会計知識がなければ、それこそ経理部や調達担当に指示された通りに
伝票を立てたり仕入れ品を動かしたりしてしまうでしょうから、
スキームの組み立てさえしっかりできたら、統制の取れている日本の会社組織では
意外と実行しやすいのかもしれませんね。

そして、社内でいろんな悪事を繰り広げてきた専務に対しても、
最後に、「最初から乗っ取ろうというようなつもりはなかったはず」と評価しており、
意外とそうなのかもな・・・・と感じました。
あまりに跡継ぎ社長がボンボンで頼りないから、自分がなんとなしなければ・・・・という思いから
次第に、自分の能力をストレートに発揮するために権力を集める必要があり、
それが、専務というポジションのために歪んだ指揮系統の構造になってしまい
最終的に、乗っ取らないとダメだという判断になってしまったのかなと。

この手の作品では、悪役に対しては勧善懲悪を求めたくなるのですが、
小さいながらも会社経営をしている身としては、
本作の専務には、なんだかちょっと同情してしまうところがありました




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