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『家族写真』
- 2022/07/22(Fri) -
荻原浩 『家族写真』(講談社文庫)、読了。

荻原浩らしい軽いタッチのコメディ短編が並んだ一冊。
いずれも家族が主人公で、強い妻と弱い夫、子供からの突き上げなり冷たい反応なり、
そういう家族内の人間関係を、笑いと自虐を交えて描いていきます。

最初の3編「結婚しようよ」「磯野波平を探して」「肉村さん一家176㎏」と読んできて、
お父さんが家族みんなに対して非常に気を遣いながら会話をしていて、
機嫌を取るような冗談を言ったり、自分を落としてネタにしたり、
涙ぐましい努力の姿に、「あぁ、今の父親っていうのは大変なんだなぁ」とおもう一方で、
「今のお父さんって、こんなにポップな会話ができるのか」と時代を感じてもいました。

私の父親はもう70代ですが、年齢の割にはおしゃべりで、
結構冗談を言って場を盛り上げたがる人ですが
年代相応の堅苦しさもあり、私の父のおしゃべり感と
本作に登場するような今の40代50代のお父さんのおしゃべり感は
またちょっとニュアンスが違ってて、うまくその差異は表現できないですが、
その違いを感じながら読んでいくと面白かったです。

そのお父さん像が最も象徴的に表れていたのが「しりとりの、り」でしたが、
渋滞の車の中で、父親が思い付きで発した「しりとりをしよう!」に対して
18歳の娘でさえ渋々ながら参加してくれるのは、ある意味、仲良い家族だなと(苦笑)。
しかも「リンパ腺・・・・の腫れた医師」から始めて、大きくバカにされることもなく
妻が「食器洗い乾燥機」と答えて、子供たちも順番に応えていくというのは、
なんだか、良い家族だなーと思えてしまいました。
オチも含めて、良い家族です。

一番印象に残ったのは、表題作の「家族写真」。
地方で小さな写真館を経営する父親が倒れて入院、
写真館を手伝っていた引きこもり気味の娘の呼びかけで、
東京でカメラマン見習いをしている息子が一時的に帰ってきます。
ベタな展開ではあるのですが、息子や娘が、それぞれ自分の生活の中でぶつかっている
壁を乗り越えようとしている気持ちに共感出来て、良い作品でした。




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