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『黒医』
- 2022/06/25(Sat) -
久坂部羊 『黒医』(角川文庫)、読了。

お初の作家さん。
本職が医師による医療業界や医療技術をテーマにしたブラックユーモア小説ということで
期待して読み始めたのですが、うーん、かなり苦手な感じでした。

小説として面白くないとか、出来が悪いとか、そういう点ではなく、
医師がこんなことを内面で考えているのか・・・・ということが
露骨に伝わってきて、苦手意識以上に嫌悪感が先に立ってしまいました。

ひたすら過酷な労働に耐えられる若者や健常者を表向きは称えつつ、
裏では高齢者が社会の実益を享受しているというような描写が続きます。
いくつもある作品の中の1つでそういう思想が描かれるのは
興味深く読めると思うのですが、どの作品も、根底にはそういう視点があるように感じ、
若者と高齢者、健常者と障害者、まだ耐えられている人とメンタルやられちゃった人、
そういう社会を分断するような世界観が、あんまり隠されずに堂々と書かれているので、
「こんな考え方を持つ人が医師として診療する側に立っているのは気持ち悪いな」と
思ってしまいました。

描かれている思想が、イコール著者の思想ではないということは頭ではわかるのですが、
あまりに繰り返し堂々と描かれるので、少なくとも著者が主張したいことではあるのかなと
思ってしまうと、あまりに不気味です。

小説の技術的な点においても、ストレートに淡々と描くような感じなので、
余計ダイレクトに著者の主張が頭に届くように感じてしまうのだとも思います。

ブラックユーモア小説だからこそ、極端な見せ方で伝わる部分もあるかとは思うのですが、
でも、やっぱり、その意図以上のものが滲み出てしまっているように思います。
私が、医師という職業を、必要以上に崇高なものとして捉えてしまっているのかもしれませんし、
医師を社会におけるエリート層の象徴として、ノブレス・オブリージュではないですが、
社会に対して果たすべき責務みたいなところで、もし何か主張をするのであれば
若者と高齢者、その対立する双方の言い分を描くとかいったバランス感覚を求めてしまいます。

あんまり著者に対して嫌悪感を抱いてしまうことって
今までの読書では経験がなかったので、
こういう感想を持ってしまうこともあるんだ・・・・・という発見でもありました。




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