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『カーテンコール!』
- 2022/05/14(Sat) -
加納朋子 『カーテンコール!』(新潮文庫)、読了。

ちょっと間が空いてた加納作品

経営不振で閉校が決まった女子大学において単位不足で卒業できず
半年間の補習講義を、理事長自ら実施することになり、
そこに集められた10名強の落ちこぼれ女子大生たち・・・・・。

この設定から、コメディ要素の強い作品かなと思っていたら、
いきなりLGBTで性自認に悩み、コミュ障となってしまった女の子(心は男の子)の話から始まり、
当人の深刻な悩みが素直に描写されていくので、
「おぉ、重い展開の話だわ・・・・」とやや読書の腰が引け気味になりました。

次の章では、睡眠障害のような症状をもつ女の子が主人公で、
ここまで読んで、「あ、この作品は、何らかの心の病や体の病を抱えて正常な社会生活が
送りにくくなってしまっている女の子たちの物語なのか」と納得。
とても現代的なテーマを扱った作品なんだと認識しました。

そして、彼女たちの問題解決に温かく見守るような姿勢で、しかし全力で取り組むのが、
人生のベテランである理事長、その奥さんの寮母さん、そして盟友の校医さんら。
この学園側のスタッフたちが、厳しくも温かいんですよねー。

結局、現代の社会問題のような病は、周囲にこのような愛情深い人たちが居ないがために
孤独な環境から発症し悪化していってしまうのかなーと感じました。
各章の主人公となる女の子たちの苦しみの原因が、
主にその家庭環境から来ている様子も丁寧に描かれており、
家庭の中で孤独だったんだろうなー、周囲の家族に悪気がない分なおさら孤独なんだろうなーと
思い至りました。

物語は、理事長たちの活躍により温かい雰囲気で幕を閉じますが、
現実社会のことを考えると、なかなかに暗い気持ちになってしまう社会派の作品でした。




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