『ユニクロ帝国の光と影』
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- 2022/05/08(Sun) -
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横田増生 『ユニクロ帝国の光と影』(文春文庫)、読了。
ブックオフで本作を見つけたとき、「あ、あの潜入取材のやつか」と思って買ってきたのですが 読み始めても正攻法の取材の様子が描かれていて、 いつ潜入するんだろ?と思ってたら、どうやら同じ著者の別の本だったようで(苦笑)。 思っていたものと違う本でしたが、でも、時間をかけてきちんと取材しているので 力の入った骨太のルポルタージュで、面白かったです。 ユニクロの急成長と、上下動の激しい経営状態が、どのような経営構造と経営哲学から来ているのか それを、ユニクロの店舗の元従業員、経営側の元従業員、そして柳井氏本人に取材し、 さらには取引先の中国の縫製メーカーや国内の物流会社にも取材しており、 多角的に事実を積み上げている印象です。 一方で、基本的なユニクロへの評価が、要は「ブラック企業」というところに収斂していくような感じで 日本人の国民服のようになった感もあるユニクロという企業の製品への評価が 過小評価のように感じました。 私は、自分の着る服には頓着しないので、「流行に左右されないオーソドックスな服で安くて丈夫」という ユニクロの製品を愛用しています。 会社勤めをしていた時は、それこそ本書に登場してくるZARAも良く使いましたが、 ビジネスシーンに使いやすいという面もありながら、縫製などの品質が良くないので 店舗できちんとチェックして買わないと怖いと感じてました。 店頭に同じものが5着並んでて、5着とも縫い目がほつれてるとかで買わなかったことも。 その点、ユニクロは安心して通販で買えます。 本作中で、元ユニクロ社員が、「ユニクロにはオリジナルのコンセプトがない」 「どういう洋服を作りたい企業なのかさっぱり見えてこない」というコメントを発してますが、 私は、このコメントには、「えーっ!?」って感じでした。 辞めた従業員の私怨が入っているようにも思ってしまいました。 日本人に「ユニクロの服ってどんな服?」と質問したら、 ほぼ同じようなイメージに集中するのではないかと思います。 「オーソドックス」「カラーバリエーション」「高機能」「高品質」「低価格」。 つまりは、誰もが着れる服を作っているのだと思います。 「着る人を選ばない」「着るシーンを選ばない」「価格に手の届かない人が少ない」 我が家は、70代の父から、2歳の姪っ子まで、ユニクロで買い物ができてしまいます。 これって、凄いことだと思います。 このユニクロが日本社会にもたらしている効能を、もっと評価すべきじゃないかなと思います。 一方で、ユニクロという企業がブラック企業なことは、そうだろうなと思います。 ある種、一つのブランドを構築した企業は、そこで働きたいという夢を持った人々を いいように食い散らかす部分があると思うので、なおさらブラック化が進みますよね。 ディズニーランドとか(爆)。 私は、経営者は、どこか冷たいところがあると思いますし、 そうじゃないと会社を大きくしていけない面があると思います。 これ以上一緒に仕事をしても会社に良い影響を与えないと判断した役員をクビにしたり 月給を支払っている社員を、同じ金を払うならとことん効率的に働いてほしいと考えたり 取引先を選択するときには、良いものを安定的に安く作れるところを選んだり。 ここまで冷徹にできるから、今のユニクロがあるのだと思います。 柳井さんが経営者として批判的に語られやすいのは、 自分の周囲に、柳井さんの冷徹さを上手くオブラートに包んでマイルドに見せてくれるような 演出家的な腹心がいないからなのかなと思いました。 著者の取材に対して、ユニクロの広報部の回答が、軒並み木で鼻をくくったような回答なのですが 例えば広報担当役員とかに気の利いた人を配置できれば、 ユニクロのブラックさをもう少し隠せるようなブランドイメージ作りができたんじゃないかなと思います。 後継者作りに失敗しているところを見ても、 柳井さんは、仲間づくりというか、チーム作りが苦手なんだろうなと感じました。 どんなに優秀な経営者でも、苦手な分野があるんだなと、再認識する本でした。 ![]()
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