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『幻の女』
- 2022/05/03(Tue) -
五木寛之 『幻の女』(文春文庫)、読了。

中編5作が収録された作品。
正直、どういう風に面白がれば良いのかが分からない作品が多かったです。

表題作の「幻の女」は、年末の百貨店を舞台に、
新興百貨店にトップの座を奪われた老舗百貨店が
売上実績奪取のために、年末は一切休暇を取るなと従業員に命じ、
具体的には女子従業員に生理を延期させる薬を飲ませるという策を講じます。
そこに社長派 vs 専務派の派閥争いや社長夫人の現場復帰なども絡んで
まードタバタするのですが、「ブラックコメディとして楽しめばよいのかしら?社会問題の提起かしら?」と
どういう軸足で読んだら良いのか分かりませんでした。

「白夜の終わり」「美しきスオミの夏に」も、学生運動の余韻や左翼的な思考と行動が全面に
出てきますが、今のご時世に読むのは、かなりしんどかったです。
当時の空気の中で読んだら楽しめたのかなぁ・・・・・。
それとも団塊の世代の人たちは今読んでも面白いと思うのかなぁ・・・・・。

文章もストーリー展開も粗削りなように感じられて、
小説としての面白さもイマイチのように思いました。

一方、ソ連が絡んでくる「星のバザール」「夜の斧」は面白かったです。
ナホトカ~横浜間の定期船に乗船した新聞記者とカメラマン。
船内のバーに勤める中年女の過去と現在をめぐり、
考え方の違う2人の男の目線からこの女の人生を描いていきますが、
それぞれの人生観や仕事観が反映されており、一方で、ストーリーの最後の
どんでん返しもあり、面白さがぎゅっと詰まった一遍でした。

そして「夜の斧」は、シベリア抑留から帰国し、その後日本で幸せな家庭を築いた男に
突如降りかかってくるソビエトからの魔の手。
そもそも、主人公がシベリア時代に背負った重荷の描写を読み、
「あぁ、当地では、こういうものを背負わされてしまった日本人も多かったんだろうなぁ」と
戦争の過酷さに改めて思い至りました。
そして、その魔の手が20年も経ってから平穏な日常に突如伸びてくる恐ろしさ。

著者はやっぱり、ソ連絡みの作品が、他の作家には無い面白さを持ってますね。




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