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『LAST』
- 2022/04/05(Tue) -
石田衣良 『LAST』(講談社文庫)、読了。

どうにもこうにも立ち行かない状態に追い詰められた主人公の“LAST”を描いた
短編集です。

日常世界で追い詰められるとなると、まぁ普通は、
ギャンブル、リストラ、借金、風俗、犯罪という根底では繋がっている一連のダークな世界に
身を落としてしまった人に降りかかる事態が想像されますが、
本作は、まさにそういう人々のお話。

冒頭の「ラストライド」。
製本工場を営む主人公は事業が傾き、借金取りに追われ、
娘にすら家の経済状態に気を使わせてしまう始末。
そんなある日の夜に闇金の事務所に呼び出され、生命保険で返せと迫られる・・・・・。
妻も娘も、見捨てるんじゃなく健気に生活を維持しようと頑張ってくれる、その姿が父親には
やっぱり辛いし、絶対に守らないといけないという気持ちになるんでしょうね。

こういう、正気を保たせてくれる家族の存在がない孤独な人は、
借金に苦しむと、ホームレスの道を選んだり、犯罪で稼ぐという方向に流れて行ってしまうのかなと
一連の話を読みながら感じていました。

家族とか、仲間とかって、やっぱり大事なんだなぁと。
まともで居られるように引き戻してくれる存在なんだろうなと。

ホームレスになったり、風俗嬢になったり、犯罪一味に加わったりという話も、
そういう風に追い詰められていく描写は重く苦しいところがありましたが、
ただ、最後に救いがあるような描き方になっていた話が多かったのが良かったです。
その“LAST”の状態から、気持ちの面で抜け出せるチャンスがあるような見せ方です。

ベトナムの話は残酷でしたけどね。
あと、「ラストコール」は、私はうまく話が読めませんでした。
Amazonでは評価する声が目立ってましたが、結末が把ちゃんと理解できなかった感じです。

最後の「ラストバトル」が、一番印象に残りました。
新卒で入社した会社の通勤経路で、新橋駅での乗り換えがあったので、
よく同僚と新橋周辺で飲んでました。
当然、消費者金融の看板を持ったオジサンたちの存在は知ってましたが、
それ以上に興味をもって考えたことがありませんでした。
本作で、どういう人がどういう働き方をしてあの仕事をしているのかを初めて知り、
あー、そういうカラクリで成り立ってる仕事なのか・・・・・と今更理解しました。
そう、普通のサラリーマンにとっては、目の前に居ても意識の外にいる人たちなんですよね。
そう思うと、世間って、冷たいですよね。私も冷たい。




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