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『神の子どもたちはみな踊る』
- 2022/02/09(Wed) -
村上春樹 『神の子どもたちはみな踊る』(新潮文庫)、読了。

長編作品は苦手だけど、短編集なら読み通せる春樹作品(苦笑)。

阪神大震災がどの作品にも出てきて、主人公たちの生活に直接的ではなく間接的に
何らかの影響を与える役割を担っています。
私自身も子供のころ、震度3の地域に住んでいて、夜中に揺れて飛び起きた記憶がありますが
身近なところで被害がなかったので、テレビの画面の向こうの出来事でした。
「こんな酷いことが今の日本でも起きてしまうんだ・・・・」という衝撃は受けたので
子どもなりに世の中の理不尽さを学んだと思っています。
そういう点では、私も、震災から間接的に影響を受けた人間かと思います。
本作の登場人物たちと同じように。

そんな立場から本作を読んでいくと、間接的に影響を受けた人間というのは、
阪神大震災がきっかけで生活が変わることがあったとしても、
たぶん、それ以前から変化の兆しは芽生えていて、震災をきっかけに表出したという
感じなんだろうなと思います。
そこが腑に落ちたので、本作は、面白く読めました。ファンタジー的な作品も含めて。

「UFOが釧路に降りる」は、最後のシマオさんの冗談の一言がめっちゃくちゃ怖かったです。
本当に、自分自身が自分の中から消えてしまいそうで。
こんな言葉、どんなに冗談っぽく言われても、投げかけられたくないなーと思いました。

「アイロンのある風景」は、夜中の海辺で3人で焚火をし、あてのない会話をぼそぼそとする、
この光景だけで、なんだか満足してしまいました。
ラストシーンで3人が会話している内容はこれまた恐ろしい未来を示唆していますが、
でも、焚火の暖かさを感じる作品でした。

表題作は、母と息子の異様な関係が不気味。
孕み続ける母も不気味。
人間が生まれてくるというのは、本質的に不気味なことなのかもと思いました。

「タイランド」は、本題であるタイでの話そのものよりも、
海外で医学の研究の最先端で活躍していた主人公が
ある切っ掛けで、自らそこから降りて、第一線から退く判断をするという最初の展開に、
私自身は別に何かの最前線に立っているわけではないですが、
今頑張っていることからリタイアしようと思ってしまう瞬間が訪れることへの恐怖を感じました。

「かえるくん、東京を救う」は、仕事から部屋に帰ったら体長1m以上もあるかえるが待っていたという
ファンタジーだったのですが、かえるくんのキャラクターのユニークさと
主人公の控えめな性格とが微妙にマッチして、そのやりとりが面白かったです。

「蜂蜜パイ」は、私の中で、最も春樹作品っぽいと感じました。
大学生のときに仲良くなった男女3人が、就職し、その中にカップルができ、それが破局し・・・・
と、オーソドックスな展開。ただ、このカップルが共有する世界観が春樹っぽい感じに思いました。
春樹素人の感覚にすぎないので、読み込んでいる人からすると違うかもしれませんが。

すんなり読めた春樹作品でした。面白かったです。




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