fc2ブログ
『赤たん褌』
- 2022/01/22(Sat) -
清水一行 『赤たん褌』(集英社)、読了。

近所のおっちゃんからもらった古い本。
戦後直後の東京で、博徒上がりの男が建設会社を立ち上げていくという物語。

冒頭、芸者を相手に閨房での描写が続き、
「これ、官能小説?」と、読むのをやめようかと思いましたが、
しばらく読み進むとGHQが出てきて、物語が進み始めました。
(最後まで閨房描写はてんこ盛りでしたが・・・・苦笑)

博打で金を稼いでいたヤクザ稼業時代に捕虜となった米兵に優しく接した過去から、
GHQが出張ってきてから優遇してもらい、土木業という真っ当な仕事をスタートし、
GHQの仕事をどんどん回してもらうことで建設会社として大きくなっていくという話。

なんの困難もなく事業が大きくなっていくし、主人公の閨房描写の生々しさから
「これは戦後を舞台にしたお伽噺なのか?」とフィクション扱いしていたら、
途中から明治座と思わせる建物の再建話が出てきて、松竹ならぬ梅竹が出てきたことから
「やっぱり、モデルがいる話か」と思い、明治座で検索して見ました。

そしたら、主人公のモデルは新田建設創業者の新田新作で、
明治座の復興以外にも、力道山の支援をしていたということで、
興業関係に縁がある人物の様子。

私は全く知らない人物でした。
こんなに華やかなのに、Wikipediaにも書かれていないのも不思議。
ヤクザ上がりということで、実業家扱いされていないということなんでしょうかね?
松竹、東映、吉本という今も続いている企業も、
戦後のプロレス興行、コンサート、サーカスなど、興行師は怪しい人、後ろ暗い人も多そうですし
ヤクザと深い繋がりのある人も多そうなので、あんまり表で名前があがらないということなのかな。

ただ、焼け野原になった東京に立ち、特に日本橋界隈を盛り上げようとする
その男気が凄い人物だなと思いました。
花街で遊びまくってますが、それが、明治座の興行の成功に繋がっていくのは、
やっぱり人間として花街界隈から信頼されているからこそだと思うんですよね。

今のフェミニズムが大きな声で語られる時代においては、
こういう芸者遊びをし尽くした男を主人公にした作品は批判的に見られてしまうのかもしれませんが、
人間力のある人なんだろうなと思います。

戦後直後の日本のパワーと、江戸っ子の粋を感じられる面白い本でした。




にほんブログ村 本ブログへ


関連記事
この記事のURL |  清水一行 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
<<『ダブル・トラップ』 | メイン | 『サイレント・トーキョー』>>
コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top
トラックバック
トラックバックURL
→http://seagullgroup.blog18.fc2.com/tb.php/6644-e2d32b43
| メイン |