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『モルフェウスの領域』
- 2022/01/16(Sun) -
海堂尊 『モルフェウスの領域』(角川文庫)、読了。

世界初の「コールドスリープ」技術により、今の技術では眼球の摘出しか選択肢がない病気に罹った
9歳の少年を5年間眠らせて、特効薬が日本で承認されるのを待つことにした世界で唯一の実験をしている
医療施設に勤める涼子。
毎日、マニュアル通りに、この少年が眠る装置の操作と管理を5年間一人で行います。

前半は、そんな涼子を中心に、コールドスリープ技術と、それを制御するための「凍眠八則」について
かなり頭でっかちな議論が展開されていくので、知的な刺激は受けますが、
ちょっと小説として楽しむにはくど過ぎるかなぁ・・・・・と思いました。

後半は、この少年が目覚めてからのことが描かれますが、
前半でくどくどと議論展開してきたことが、後半に具体的な少年の行動として
その懸念されていたリスク事象が具現化されたので、興味深く読めました。

ただ、少年が眠っているときは技術的な面のリアリティは気にならなかったのですが、
実際に少年が目覚めて自我を取り戻していく過程を読んでいると、
「コールドスリープ」技術って、SFのテーマ以上の現実味はあるのかしら?と
私は逆に非現実性の方が気になっちゃいました。
特に著者が医師なので、医師として可能性がある技術として評価しているのか気になりました。

記憶の扱いの問題とか、肉体的な成長の問題とか、筋肉などの劣化の問題とか、
腫瘍の成長の問題とか、そういういろいろな要素が、なんだか辻褄が合っていないような気がして
あんまり腑に落ちない感じで、あくまでファンタジーとして読んでました。

前半の主人公だった涼子の、特殊な人物造形のおかげで、
なんとか小説として体裁を保ててた気がしますが、海堂ファンじゃないと楽しめないレベルに
理屈っぽい作品かなと感じました。




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