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『世界地図の下書き』
- 2022/01/04(Tue) -
浅井リョウ 『世界地図の下書き』(集英社文庫)、読了。

事故で両親を亡くした小学生の太輔は、児童養護施設に入所することになり、
そこで同室の1班として自分より小さな少女や、同い年の少年、年上のお姉さんと一緒に
生活するようになり、成長していく過程を描いています。

主人公の太輔は、事故後、ダイレクトに施設に入ったわけではなく、
一時的に叔父夫婦に引き取られますが、そこでDVを受け、
トラウマを負った状態で施設に入所するという経緯を経ています。
両親の喪失だけでなく、その後のDV被害と、過酷な体験を経ており、
よくぞ自分を保てているなと、素直に応援の気持ちで読んでいました。

施設の1班の面々は、親がいない子もいれば、親はいるけど暴力などが原因で同居できない子、
親戚はいるけれども引き取るところまでは至らない子、様々な背景があり、
それぞれの状況を、じっくり描くのではなく、ちょい見せで描いていくので、
逆に想像が働くようになっていて、彼ら彼女らの苦労に思い至ります。

そして、学校生活の方でも、施設に住んでいることが原因でいじめられたり、
もしくは家庭の安定感や家庭内での教育が不十分なことで情緒形成が歪んでしまって
コミュニケーションがうまく取れないことでいじめられたりという場面が描かれており、
子どもって残酷だなー、強い者と弱い者を見分ける嗅覚をすでに鋭く持っているよなーと
思ってしまいました。

そんな逆境の中で健気に手を取り合って生き抜こうとする姿を応援し、
また高校を卒業したら退所するお姉さんへの恋心も応援していたのですが、
最後の展開は、私には共感できませんでした。

施設の子どもたちが、自分たちの思いを実現するために、
窃盗を肯定するような描き方は、私には受け入れることができず・・・・・。

目的が前向きなものであれば、窃盗という反社会的行為も良しとされることがある・・・・・
というような価値観は、多様で多数の人間たちで社会を構成する以上、
やっぱり否定しなければいけない考え方だと思うんですよ。
窃盗はどんな目的であれいけないこと、ということを、子供たちには教えるべきではないかと。

しかも、その窃盗行為を、児童養護施設の子どもたちにさせるという物語の展開も
私としては、好みではなかったです。
この純粋で健気な子供たちに、窃盗行為はさせてほしくなかったという思いです。

朝井作品は、作中で、世の中の冷酷な在り様を描くところに私は魅力を感じていたのですが、
本作では、作外というか、作品と読者としての自分との間で、世の中の嫌な部分を実感してしまい
読後感は良く無かったです。




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