角田光代 『かなたの子』(文春文庫)、読了。
泉鏡花文学賞受賞の短編集とのことで、期待して読んだのですが、
あんまり「すごい!」という感覚にならなかったです。
細かいところが目に付いてしまって。
冒頭の「おみちゆき」は、かつての地方の貧しい集落における信仰のあり方として
一人の犠牲の上に貧困を受け入れていこうという風習かと思うのですが
子供の目を通して犠牲者と村民との関係を描いていて怖かったです。
この作品は面白かったです。
次の「同窓会」から、細かいところが気になっちゃうんですよねー。
毎年やってる少人数の同窓会のシーンで、主人公に向かって同級生が「仕事なんだっけ?」と
質問するのですが、それ忘れる?という疑問。しかもテレビ局勤務というとても印象に残る仕事なのに。
その後の展開で、この質問をしてきた同級生を含め数人が、特殊な思い出を共有した
ある種の仲間であることが描かれますが、そんな関係なのに、この距離感って何??という感じ。
まぁ、特殊な思い出だから、距離を保ちたいという本音の表れなのかもしれませんが、
それなら毎年同窓会に集まるのって変じゃない??
「道理」では、昔の恋人が説く道理の世界観が、精神的な不安定さと相まって
非常に気持ち悪いものを作り上げていて、もともと私の苦手なジャンルでしたが、
それよりも、この昔の恋人のキャラクターが、話の登場時点の主人公の目から見た好意的な描写と、
過去に付き合っていた時の思い出を主人公が振り返るときの批判的な描写の
あまりのギャップに、「男の方こそ精神に問題があるんじゃないのか?」と思ってしまう始末。
この作品以降は、登場してくる女性が、何かに精神を乗っ取られているような不安定さを
感じさせるものが多く、ちょっと一本調子な印象を受けてしまいました。
女性にそのような精神的な歪みを持たせる作品は、著者に限らず多いと思うのですが、
本作では、その歪みが生じた環境は多様なのですが、歪みのあり方のバリエーションが
乏しいような感じがしました。
イマイチなまま読み終わってしまいました。
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