『ホワイトラビット』
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- 2021/09/22(Wed) -
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伊坂幸太郎 『ホワイトラビット』(新潮文庫)、読了。
いかにも伊坂幸太郎的な複雑な構成と叙述トリックが楽しめる作品でした。 誘拐ビジネスで成長してきたベンチャー企業に誘拐担当として従事する兎田。 しかし、兎田の妻が当のベンチャー企業に誘拐され、人質との交換条件に、 とあるコンサルを捕まえてこいとの命令が。 運よくコンサルを見つけたものの、追い詰めた先の一般家庭に立て籠もる羽目になってしまい コンサルをベンチャー企業の社長のもとに連行しなければいけないのに その家は警察とメディアに包囲されているという絶体絶命のピンチ。 まー、誘拐事件と空き巣事件と殺人事件がバラバラに発生しているのに その3つの事件が一つの家という空間に集合してしまうという、 なんともご都合主義的展開なのに、ヴィクトル・ユゴーの言葉に乗せられて、 「なんだか、そんな些末なことは気にしなくてよいかも・・・・」と思えてしまう伊坂ワールド。 3つの事件が交錯する家の中で、状況をいち早く理解し、整理して、 新たな立てこもり事件へと組み立てなおしたのは、空き巣の「黒澤」。 そう、『首折り男のための協奏曲』に登場した伊坂ワールド全開の黒澤です。 どんなに切羽詰まった状況でも、ちょっとシニカルに茶化しながら受け答えしてしまえる男。 彼の提案した脱出プランのおかげで、この作品の複雑怪奇なストーリー構成が出来上がっています。 さらには、とっとと現場から消えればいいのに、わざわざ面倒ごとを買って出るお人好しなところも。 それが、どんどん、事態の複雑化に拍車をかけます。 この複雑な構成を、ワクワク感を与えながら、でもちゃんと一読で分かるように 場面を区切って読者に提示していくその物語構成力というか ストーリーテリング力というか、もう、言ってしまえばプレゼン力だと思うのですが、 そこが伊坂作品はずば抜けてますね。 面白い。 解説で書かれてましたが、仙台という町の「名前は当然知ってるけど行ったことがない街」の 抽象性が、作品に与える効果もあるんだろうなと納得。 (あ、本作の解説は、多面的なのにシンプルな考察が素晴らしいと思いました) 一気読みの面白さで、満足、満足。 ところで、この文章を書くのに、Wikiで伊坂幸太郎を調べたのですが、 もう50歳になられたんですね! 青年作家の印象が強いので、それにも驚いてしまいました。 ![]()
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