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『逆説の日本史 3 古代言霊編』
- 2021/08/21(Sat) -
井沢元彦 『逆説の日本史 3 古代言霊編』(小学館文庫)、読了。

前半の称徳天皇と弓削道鏡の政治に対する考察が非常に面白かったです。

学校の日本史の授業では、当然、弓削道鏡は天皇の位を手に入れようと画策した悪人として、
そして称徳天皇の方はそんな怪僧の謀略を許した愚かな女帝として、
もちろんこんなキツイ言い方ではないですが、そういうニュアンスで教えられました。
そして、今まで、私自身、そういう評価を下していました。

著者が言うように、日本という国の将来のことを思っての国防政策の相違による派閥争いと
天皇の血筋というか正統性が揺らぎかねない裏事情を隠蔽するために
歴史の記録が書き換えられたというのは、ありえるというか、無いとは言えないなと感じました。

称徳天皇と弓削道鏡の関係は清いものだったんだと言われると
そこは、もう、正直後の時代の人間にはよくわからないので、なんとも評価しづらいですが、
女帝個人の肉欲で民間人を天皇の位に付けようとしたと説明されるよりは
国の将来を思って覇権争いをしたと説明された方が、個人的にはすんなり納得できるというか、
愚かな天皇より国を思う天皇であって欲しいなと後世の国民としては思ってしまいます。

ただ、井沢史観が保守派の賛同を得られない理由は、
前の第2巻のときには「万世一系に対して疑念を呈するからだ」と書きましたが、
第3巻ではさらに、「女性天皇でも有能である、危ない男に付け込まれた事実は無い」となると、
これまた保守派が嫌な顔をしそうです(苦笑)。

令和の世でも、某皇族の結婚問題を問題視する人々の中には
「あの男が皇族とつながる立場に位置づけられるのは危険だ」という意見があり、
だから女性天皇はリスクが大きすぎるという批判に繋がっているかと思います。
その歴史上の実例として「称徳天皇と弓削道鏡」が挙げられているわけでして。

だんだん読み進めていくと、井沢史観が言論界から支持されない理由がわかってきました。
こういう歪みがわかるもの、井沢作品の面白さですね(爆)。

六歌仙の話も、飛び抜けて優れた技量を持つ歌人ではないとぶった切っているのも
目から鱗の指摘でした。




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