『月の上の観覧車』
|
- 2021/06/03(Thu) -
|
荻原浩 『月の上の観覧車』(新潮文庫)、読了。
荻原作品はドタバタコメディの印象が強いのですが、 本作は、様々な人生を背負って生きてきた人が、ふと歩みを止めて自分の人生を 振り返った瞬間を描いた作品が多く含まれている好短編集でした。 あぁ、こんなしっとりした作品も書くのかとビックリ。 個人的に好きだったのは「上海租界の魔術師」。 戦前に上海でマジシャンとして活躍した祖父は、いまや半ボケの状態で 日々をゆったり過ごし、時々見せてくれるマジックは失敗することも増えてきた。 そんな祖父が、少女の抱える人生の悩みを優しく包み込み、 どこまで意識した行動なのかあやふやだけれど、しっかり前を向かせてくれる そんな大きな愛情を感じるおじいちゃんの存在が、美しい話だなと感じました。 他にも、離婚したり、家族がバラバラになったり、ゴミ屋敷化していったり、 人生の上手くいかない局面が現在に暗い影を落としている人々が登場してきますが 最後、ハッピーとまではいかないまでも、どこか明るい光が一筋差し込むような 救いのある展開だったので、共感を覚えながら読み終わることができました。 ほっこりとは、またちょっと違う感覚なのですが、 人生は上手くいかない時もあるけど、前向いて歩いてたら少しずつ自分が変わっていける時が やがてやってきそうだな・・・・と思える作品が多かったように思いました。 荻原作品、短編の方が好きになっちゃうかも。 ![]()
|
コメント |
コメントの投稿 |
トラックバック |
トラックバックURL
→http://seagullgroup.blog18.fc2.com/tb.php/6479-9b86a13f |
| メイン |
|