『熔ける』
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- 2021/05/20(Thu) -
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井川意高 『熔ける』(幻冬舎文庫)、読了。
大王製紙の会長だった著者が、マカオのカジノで会社の金を100億円以上スッたという報道に触れたとき、 私自身、勤め先の取締役会や株主総会の運営主担当をしていたので、 「いったいどういう手続きで100億円もの金を引き出したんだ!?」とほんとに疑問でした。 日産自動車のゴーン氏の解任劇の報道を聞いた時も、 「追い出した側の社長らは正義みたいな扱いだが、あんたら取締役会で承認したんじゃないの?」と やはり手続き論のところで疑問符でした。 まぁ、大王製紙は同族経営だし、ゴーン政権下の日産は外国人が仕切ってたようだし、 日本企業とは言え特殊な環境だから、やりたい放題ができたのかなぁ・・・・と思いつつ、 でも大企業なんだから、社外役員とか監査役とか会計監査人とか、 それなりに内部統制が働くはずなんだけどなぁ・・・・・と腑に落ちず。 というわけで、本作を読んだら実態が分かるかなと思い、読んでみました。 で、まず感じたのは、強烈な既読感。 「あれ?前にこの本読んでたかな?」というぐらいの感覚です。 Blogで検索したら、吉田修一さんの小説のせいでした。 本作よりも、吉田作品の方が臨場感にあふれる描写で、よりリアルさを感じられます。 さすが小説家! 小説の方は、ラストが創作でしたけどね。 で、肝心の手口の部分は、グループ会社で用立てできそうなところに電話して お金を振り込んでもらうという、なんとも単純なものでした。 あー、創業者一族って、こんな権限を持ってるんだなぁ、そして誰もその指示を疑問に思わないんだなぁと。 著者は、その金額の大きさ及び使用目的がスキャンダラスだったので 大きく報道されたし、逮捕も収監もされましたが、 もっとミミッチイ案件だったら、世の中の中小企業と社長の間で日常茶飯事に行われてそうだなと なんだか虚しくなりました。 著者個人のことをちゃんと意識したのは、Youtubeのホリエモンチャンネルにゲスト出演した回を見た時で、 「あれ、カジノ狂いのバカ息子かと思ってたら、意外と興味深い人なのかも」と印象が好転したのですが、 本作を読んで、「あれ、結構、自己弁護みたいな感じになってるな」と、また評価反転(苦笑)。 創業者一族に生まれて、必死に勉強した学校時代があり、遊びまくった大学時代があり、 そして入社後に難しいポジションを若くして任され・・・・という、事件を起こす前までの部分は 興味深く読みました。 でも結局、吉田修一作品の方が面白かったな・・・という感想で終わってしまいました。 ![]()
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