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『絶望の国の幸福な若者たち』
- 2021/04/05(Mon) -
古市憲寿 『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)、読了。

しばらく前、古市センセって、落合陽一センセにブチ切れられてましたよね~(苦笑)。
ブチ切れた切っ掛けの古市氏の発言については別に何の感想もないのですが、
ただ、古市氏が「社会学者」っていう肩書で紹介されるのは、私も違和感を覚えます。

大学院まで社会学を学んだという実績をもって言論界や芸能界に入ってきた
いわゆる「高学歴タレント」という位置づけで私は見ています。
これは、ディスる意図はなく、そういうポジションの言論人が居ることも多様性であり、
そういう立場だからこそできる思い切った発言や軽いノリの発言もあるはずで、
そういう社会的な役割の人の発言に、いちいちブチ切れるのもどうかねぇ・・・・・というのが
騒動に対する私の感想です。

さて、本題から話が逸れましたが、本作は、日本の若者の実態を解説した本。
「大人」の学者先生や、「大人」のメディアが論じる「若者像」とのズレを
若者側の目線で語っています。

「大人」の勘違いやレッテル貼りに対して、真正面から怒って反論するのではなく、
「分かってないよね~」と半笑いで馬鹿にするような雰囲気もあり、
「大人」な読者は嫌な顔をしそうですが、天邪鬼な私は面白く読めました。

内向き志向とか、プチナショナリズムとか、イマドキのデモ風景とか、
様々な切り口で若者像を捉えていきますが、個人的に一番衝撃だったのは、
「20代の生活満足度が上昇するのは不況期のような暗い時代」という指摘。

要は、明日が今日よりも良くなると思えないときに、今に満足しようとしてしまうということ。
これって、満足度は自分の中から湧き出てくるものではなく、
社会環境という外部の特に制約面からもたらされているということになり、
あまりにも能動性がないというか、自主自律の考え方が乏しいというか、
受け身な感覚に唖然としました。
受け身なうえに、妥協しているところがなんとも・・・・・。
まぁ、好景気の時は、自分と周りを比較してしまい、不満がたまるという面が大きいのでしょうけれど。
私自身も、頭では前向きに考えているつもりでも、本能的には社会環境次第なのかなぁ。

あと、イマドキのデモ風景のリポートは興味深かったです。
正直、まじめなデモはプロ市民的な中高年が主体であり、
一方、今風のデモは、「よく分からないけど楽しそ~」という人たちを集めてイベント化しているという
そんなイメージだったのですが、本作では、そんな「楽しそうだからとりあえず来てみた」という
意識程度の人から、もう少しデモのテーマにきちんと興味を持ちつつ、でもプロ市民の活動には
シンパシーを感じられないという人たちまで、幅広くインタビューしており、
あぁ、こういう構造をなしているんだ・・・・と、なんとなく実像がつかめました。

ただ、あくまでデモに参加している、つまり、集められた側の人々の声ばかりで、
デモを主宰している側の、中心人物たちの声が拾われていなかったので、
そこは物足りなかったです。

楽しそうなふりして軽いノリで若者を集めて、そこから次第に思想を吹き込んでいき
見込みありと思う人を、より次元の高いデモ活動やその他の活動に巻き込んでいくのではないかと
勝手に思っているのですが、そこの仕組みも解説してほしかったです。
裏では、プロ市民層と繋がっているのではないかと思っているのですが、
その辺はどうなんでしょうかね?
あんまり思い込みで判断しない方がよいかな。

今の時代は、デモというリアルな場での活動以上に、
Youtubeなどのオンラインの場での主義主張の展開が広がっており、
リアルとオンラインとをどのように組み合わせて、若者たちを取り込もうとしているのか
そのあたりの最新レポートも著者にしてほしいものです。




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