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『小説財界』
- 2021/03/07(Sun) -
清水一行 『小説財界』(集英社)、読了。

久々の清水作品。
大阪商工会議所の会頭選挙をめぐる、大阪財界を二分した闘争を描いています。

他の清水小説はモデルとなる人物や出来事があるので、
本作も、大阪でそういう闘争があったのかなぁと思いながら読みました。
古い時代のことなので知りませんが。

そう思って読むと、登場してくる財界人たちが、
旧財閥系の住倉だったり、日本一の線路の長さを誇る阪鉄だったり関西ガスだったり、
すぐに元ネタがわかるような名前の会社がたくさん登場してきて、
こんなに露骨に書いちゃって大丈夫なのかしら?とドキドキしてしまいました。
あからさまにお金が飛び交ってますし、人物評も辛らつです。
昭和の時代だからOKだったんですかね?
「小説」と銘打てば何でもありなのかな。

さて、次期会頭含みで副会頭を務めていた大竹の急死により
引退するとみられていた現職会頭の迫田が5選を目指しはじめ、
それを阻止しようとする副会頭が大阪から東京の財界に出ていった男を大阪に戻そうとする。
この大綱派閥の設定(事実なのかな?)は、絶妙な駆け引きの上に成り立っていて、興味深いです。
5選阻止!という本音がありつつ、大義名分が成り立つ対抗候補を見つけないと
大っぴらに支持を求めにくいということで、東京から引っ張ってくることに。
このあたりの理屈の整え方も、財界らしいところだなと面白かったです。

ただ、残念だったのが、この東京から大阪に戻した小早川という人物に
なんら魅力が感じられないこと。
リーダーとしての統率力も戦略性もなく、ただ、会頭になりたいという欲望だけで動いているような印象。
小早川が腹心の部下として大阪に連れてきた男たちも、こんなので東京でやっていけたのか?と
疑問を感じざるを得ない無能ぶり。
この人しか居なかったのかしら・・・・・と思ってしまいます。

迫田派と小早川派の間に挟まって登場した関西ガスの安原という人物は、
人間性も経営者としての能力も高そうで、期待値の高い人物だったのに、
この人もその理由でダメになるのか・・・・と、中盤での展開はちょっとご都合主義に感じました。
でも、これも現実に起きたことなのかな?

とまぁ、なんだか面白くなかったかのような感想を書いてしまいましたが、
十分に楽しめる小説でした。
財界のドロドロした部分が余すところなく描かれた経済小説だと思います。




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