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『ミーナの行進』
- 2021/02/24(Wed) -
小川洋子 『ミーナの行進』(中公文庫)、読了。

ミュンヘンオリンピックの年に、母の姉である叔母の家に1年間だけ預けられた中学生の朋子。
いとこで小学生のミーナは病弱で、発作を起こしては時々入院するほど。
学校まで歩いて通学できないので、乗り物に乗って登校します。それはカバ。

芦屋の豪勢な洋館での生活は、その建物や庭や調度品の優雅さだけでなく、
ドイツ人の祖母やハーフで良い男の叔父、穏やかな叔母、躾に厳しいお手伝いさん
何でも言うことを聞いてくれる小間使いさん等、普通の家族には無い多様性に富んだ家です。

みーんな優しい人たちで、そんな人々の愛情を注いでもらっているミーナは
聡明な女の子に育っています。
が、言葉の端々に、叔父夫婦を中心とする何だか暗い影みたいなものも見えてきます。
長期間家を不在にする叔父。明言されていないけど不倫してるみたい。
昼間からアルコールを飲んで、活字の誤植探しに夢中になる叔母。ちょっと心のバランスが悪そう。
なんだかちょっとギクシャク感を覚えてしまいます。

作品の雰囲気は温かいのに、「何かの拍子に叔父・叔母の関係が崩壊したりしたらどうしよう」
というような不安感も覚え、終盤に向けて、朋子が思いきった行動を取っちゃったりするから、
ドキドキしましたわ。

時代背景も、ミュンヘンオリンピックという、五輪の本筋のところではない事件で
世界の記憶に残ってしまった大会だったので、その背景も暗さを漂わせていたのかも。
芦屋の洋館の中は幸せでも、世界は大変な時代だったのですね。

オリンピックの描写は、朋子とミーナが男子バレーに熱中する姿が中心に描かれていますが、
そのピュアなスポーツ熱を描けば描くほど、テロの暗い影が逆に意識されてくるというか、
ギャップが印象に残りました。

物語の中では、基本的に、温かく穏やかな一家の話で満ちているのに、
常に陰を意識させられるような作品で、さすが小川洋子・・・・と感じ入る一冊でした。




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