佐藤昭子 『私の田中角栄日記』(新潮文庫)、読了。
佐藤昭子という名前は知ってますし、「淋しき越山会の女王」という皮肉なニックネームも知ってます。
でも、いずれも知識として知っているというだけで、何の思いもない人物です。
秘書の目で見た田中角栄という政治家のことも興味はありましたが、
それよりも、この時代に首相の政治事務所を取り仕切った女性秘書という存在に興味を惹かれました。
で、読んでみて最初に思ったのは、非常に聡明な女性であるということ。
自分で付けた日記を基に、当時を振り返るという構成になっていますが、
その日記の文章が端的かつテンポがあり、文章能力を感じます。
もちろん、本作用に手が入っているのかもしれませんが、でも、能力高そうだなと思わせる文章です。
ただ、日記を軸にしていますし、また、田中角栄に対する世間の批判への反論という形なので
田中角栄の功績や政治家としての信条が軸に書かれているわけではなく、
あくまで周囲や世間が田中角栄に対しどのような態度をとったかを書き綴り、
それに対して、「私の知ってる本当の角栄はこういう人だ!」という主張なので
当時の政治の流れや派閥がある程度頭に入っていないと、分からない部分もあります。
政治の結果の部分は、知識として知っていますが、
当時の政局までは分からないので、同時代を生きていたら、より楽しめただろうなと残念です。
そもそもの著者と角栄のはじまりは、著者の元旦那が角栄の選挙の手伝いをしていたことに始まり、
離婚後に角栄に請われて秘書になったとのこと。
秘書能力を見抜いての抜擢だったのか、それとも愛人候補として見ていたのか。
本作に登場する著者の娘さんは、作中では書かれていないですが
Wikipedia情報だと父親は角栄とされているようで、こんな公認の愛人関係って成り立つんですね。
当時の日本は、まだまだ緩かったということなのですかね。
角栄の死に目に会わせてもらえないどころが、葬儀にも出られなかったのは
田中真紀子女史との対立関係が原因のようですが、
真紀子 vs 昭子の戦いも、怖いもの見たさで面白いかも。
・・・・・・いや、毒が強すぎてしんどいかな?
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