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『55歳からのハローライフ』
- 2021/01/23(Sat) -
村上龍 『55歳からのハローライフ』(幻冬舎文庫)、読了。

50歳以上の中高年が主人公の中編5つが収録されています。
定年退職、熟年離婚、リストラ、子供の巣立ちによる夫婦2人暮らし等、
人生の転換期に直面したときの右往左往が描かれています。

私自身40代前半で、まだ55歳という年齢のことは
リアルには想像できません。
一方で、両親はもう60代後半ですが、彼らが55歳の時って、
家業が自営業のためバリバリ働いていた時期であり、
全然、人生の転換期という印象は受けませんでした。
むしろ、父親が70歳になる今、「そろそろ店を閉めることを考えないとなぁ」と言い出しており
ようやく本作の主人公たちのような老後に備える話が出始めた感じです。

ただ、70代の生活に向けて考えることは、「無理なく生活する」ということであり、
年金ももらえているし、子供ももう40代・30代で生活は安定しているし、
そもそもそこまで長期間に渡って人生設計をする必要がなくなっているという点で、
あまり悲壮感は感じません。(子供の私はがのほほんとしてるだけでしょうか?)

でも、本作のように、50代って、まだ人生の折り返し地点であり、
そこから先の人生の長さを考えると、例えばリストラされたら、頭の中が真っ白になってしまいそうです。
離婚も、生活基盤をリセットするということですから、そうそう決断できることではないように感じます。

そんな、人生の一大転機に臨んだ主人公5人ですが、
最初の「結婚相談所」の主人公を読んで、「意外と自己評価高いんだな」と冷めた目で見てしまいました。
むしろ興味を持ったは、結婚相談所の相談員の仕事をしている女性の方。
初めて訪れた人に不安に思わせないように優しく誘導して信頼感を得るテクニックは流石です。
一方で、男性スタッフの言動からは「登録する男も女もマッチングの駒であり商品だ」という感じが
透けて見えており、この業界の裏側の部分だなと思い、それはそれで興味深かったです。
別途、結婚相談所のお仕事小説があったら読んでみたいなと思いました。
人たらしの天才みたいな人と、人を商品と思っている冷酷な人がタッグを組んでいるような気がします(笑)。

次の「空飛ぶ夢をもう一度」の主人公は、勤め先をリストラされ、
そこからホームレスを街で見かけるたびに「自分もホームレスになってしまうかもしれない」という
強迫観念が離れなくなり、少しでも稼ぎを得ようと交通整理の仕事に就きます。
こういう堅実な考え方ができる主人公の方に私は惹かれました。
「給料が少なくなっても、肉体的に大変でも、でも毎日の仕事を得られることを優先する」というのは
とても地道で安心できるものの考え方のように思います。
20年以上勤めてきた会社をリストラされても、こうやって頭を切り替えられる人って強いなと思います。
だからこそ、子供のころ友達だった男がホームレスになっていることを知っても、
親身になって助けてやろうという気持ちが湧いてくるんだろうなと思います。
5作の中で一番好きな話でした。

というわけで、2作目に満足していたら3作目に愕然。
早期退職に応じた男が、もう仕事はお終いにして、キャンピングカーで妻と全国を旅行する日々を送るんだと、
むしろワクワクしながらリタイアの日を迎えます。
「こりゃ前向きな人生だな」とほほえましく見ていたら、なんと妻には一言も相談しておらず、
ある日突然、「キャンピングカーを買うぞ」と宣言する始末。
当然、自分の毎日がある妻は愕然とし、娘は呆気にとられます。
そりゃそうだ。
こんな自分勝手な父親は嫌だわ。
私は完全に娘の立場から母親を応援する目線で本作を読みました。
「嫌なことは嫌だとはっきり言わなくちゃだめ!最初が肝心だ!」とそれこそ自分の母を思うような気持ちで。
最後は、娘の助言で、新しい仕事という方向にやる気が向かうのでハッピーエンド?だったのですが
それにしても、今まで良く家族がまとまっていられたなと心配になるほど父親の思考回路が???でした。

第4話の「ペットロス」は、オーソドックスなペットロスの話でしたが、
最後の旦那さんの思いが分かるシーンが良かったです。
それまでの印象が悪かったので、一転して温かみのある人に印象が変わりました。
長年寄り添った夫婦でも、相手の人間性が分かっていないこともあるんですね。

最終話の「トラブルヘルパー」は、男の淡い恋愛もの。
これはこれでオーソドックスな片思いの話だったように思います。
介護が絡んでくるとことが50代の話ですけどね。
10トントラックに乗って告白すると成功間違いなし!というのは
この業界のあるある話なんでしょうか?それとも龍さんの作り話???




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