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『実録 頭取交代』
- 2021/01/20(Wed) -
浜崎裕治 『実録 頭取交代』(講談社+α文庫)、読了。

手元にあったので、ふと手に取ってみたのですが、
たまたま少し前にYoutubeで見た「ポンジスキーム」の解説動画で
まさに取り上げていた第一生命の事案だ!とすぐにわかりました。

須田さんの動画では、どちらかというと生保レディに軸を置いていましたが、
本作は、銀行側を舞台にしています。

主役は、維新銀行のドン、相談役の甲羅天皇です。
労組対策のために中途入社で引き抜かれて銀行入り。
効果的な手をどんどん繰り出したことで、当時の頭取から手厚い信頼を受け、
次々と出世していきます。
そして、ようやく自らが頭取の地位につき、そこに連綿と居座るのかと思いきや
代表権のない相談役に退いて、会長と相談役の双方を裏で操るというしたたかさ。

中途入行でここまでの権力体制を築き上げることができるというのは、
ただモノではなく、やはり実力者ではあると思います。
ただ、銀行本業である営業面での施策はあまり何をやったのか描かれておらず、
本業を伸ばすことではなく、行内権力闘争のみで支配力を構成しているという
このアンバランスさがまた不気味です。

私自身、5年前まで銀行グループの中で働くサラリーマンだったので、
銀行の中の体制というのは一般の方よりは知っているつもりですが、
最初の印象は、「なんでこんなに内部統制が効いてないんだ!?」
「生保レディ個人とこんなにアカラサマに癒着したら、すぐに内外から指導が入るだろう!?」
と、維新銀行の中のあまりにも個人に振り回される様子に唖然としました。
監査室とか機能してないのかしら?金融庁にタレコミとかないのかしら?と。

そして、取締役会のクーデター騒ぎの後も、甲羅天皇がそのまま居座り続けることが
できているという事実に驚きました。
正直、小説の世界でこんな展開を描いたら、「リアリティがない」と叩かれる気がします(苦笑)。
つい最近まで相談役の座についていたという。
行員さんたち、どんな気持ちだったんだろう?もう麻痺してるのかな。

まぁ、でも、金融庁も、金融業界の適正化のためではなく、
金融庁の指導力を高めるために本クーデターを利用していた節があり、
世の中、正義にそって動いていくわけではないんだなと思いました。

甲羅派と谷野頭取派の取締役会での対決は一気読みの面白さでした。
谷野派が理路整然と反論しているのに比べて、
体当たり攻撃のような状態の甲羅派役員の頭の悪さが際立っていましたが、
なんで甲羅天皇はこんなアバウトな攻撃をやらせたんだろうか?と疑問を抱いていたら
最後の最後に甲羅天皇自ら取締役会の議論を結論付ける行動を見せて、
「あぁ、なるほど・・・・こういうことだったのか・・・・」と納得。
このような事態のために予め手を打ってあった、その先見性に感嘆しました。
この頭の良さを自分のためではなく銀行のために活用したら、きっと営業成績も
もっと上がっていたと思うのですが・・・・・無駄な感想ですね(苦笑)。

最後に、著者は、この維新銀行のモデルとなった山口銀行で
取締役まで務めた人とのことで、反甲羅派だったんだろうなとは思いますが
ここまで赤裸々に描いてしまって、山口銀行から訴えられないのかしら?と心配になるほどでした。
まぁ、銀行側としても、変に裁判に持ち込んで、そこで事実認定されてしまうと困るという
事情があるのかもしれませんが。

著者の書く文章は、著者自身の思いを極力抑えこんで、
経過のみを淡々と描いていくので、好感が持てました。
こういう作品を書くとき、自分の主張が押しつけがましい人って、結構いますからね。

ビジネスマンとして、いろいろ考えさせられる本でした。






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