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『ランナー』
- 2021/01/16(Sat) -
あさのあつこ 『ランナー』(幻冬舎文庫)、読了。

陸上部に所属していた高校1年生の少年。
競技会での敗北で挫折し、同時期に起こった両親の離婚に始まる家庭の問題にも直面し、
陸上部を退部し家で幼い妹の遊び相手をしています。

この少年に対して、陸上部の先輩マネージャー、陸上部の同級生の友人など
様々な人が退部後の少年のことを気にかけて声をかけてきますが、
その接し方が、無理には踏み込まず、一線をきちんと引いたうえで
自分の気持ちを押し付けすぎないように配慮しながらなので、
すごく素敵な人たちに囲まれているなと素直に羨ましくなりました。

一方で、家庭の方。
両親が離婚。子供二人は母親が引き取りますが、妹はもともとは父親の弟の子供。
弟夫婦が事故死したため養子縁組で引き取った娘です。
家族4人で居る時は、実の子も養子の子もともに愛情をもって育てられたのに、
離婚をして、自分が一家の生計を全部背負うことになり、追い詰められた日々を送る中で、
娘の面影の中に逃げていった夫の姿を見てしまうようになり、ついに虐待してしまう。
その虐待現場に居合わせた息子。

いやぁ、これはもう、しんどい。
実の子である息子の目線で、世の中に対していい恰好をしてしまいがちな母親と、
自分が養子であるとは知らない幼い妹の、緊張感のある日々を描くので、
母や妹がそれぞれいつ爆発するか、いやーなドキドキ感があります。

そして、少年の周囲にいる優しい人たちは、
基本的に、競技会での挫折が原因で退部したと考えているので、
家庭の問題にまでは手を伸ばすことができません。
不器用な少年も、家庭の話を相談することができず、背を向けてしまいます。

世の中のニュースで、時々、虐待事件のことが報じられ、
どうしても被害者になった子供への憐憫と、虐待をした親への非難ばかりが報じられますが、
同居している家族とか、周囲の人間のことは、あまり想像したことがありませんでした。

まぁ、ニュースになるぐらいのひどい虐待だと、親の側の異常性に目が行ってしまいますが、
そうではなく、世間一般にはびこっている虐待の現実というのは、
本作にあるような、虐待をしてしまった自分に悩む親、愛情を欲しがりながらも一方でおびえる子供、
そして、その暗い緊張感の中で同居を強いられる他の家族、そういう姿なのかなと思いました。

スポーツものとして期待して読み始めると、
本作はしんどい読書を強いられてしまうと思います。
こんな家族の重い悩みというのがあるのかと、それが特異なことではなく全国あちこちになることなのかと思うと
気持ちが非常に沈みます。

そういう現実を教えてくれたという点では、ためになる読書でした。
スポーツものの爽快感は、あまり得られないですが、
最後、どういう展開になるのかと思ったら、結構、安易な展開で、
そこに関しては、同じ悩みを抱える子供が読んだらどう思うのかなと、
他人事ながら心配になってしまいました。




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