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『図書館危機』
- 2020/12/20(Sun) -
有川浩 『図書館危機』(角川文庫)、読了。

シリーズ3作目です。

前作を読みながら、手塚や柴崎のバックボーン的な暗い話が出てくると
しんどくなってくるかも・・・・・と予想していたのですが、
あにはからんや、いきなり恋愛モード全開で、別の意味でしんどかったです(苦笑)。

確かに、主人公・郁の思い出の王子様が上司の堂上であることが分かり、
郁にバレたことで堂上も急に意識し始めるという、
まあ、ベタな展開です。

前半の章が、そういう恋愛モード中心で展開していき、
話の軸となるエピソードが小粒だったので、読み応えないなぁ・・・・と思ってしまったのですが、
編集者の折口を主人公にした「ねじれたコトバ」は
ストレートに言葉狩りの様子を描写しており、興味深く読みました。

「床屋」という言葉がメディア良化委員会の違反語に当たるから、雑誌のインタビュー記事で
適切な言葉に自動的に置き換えたら、インタビューされた側が激怒したという展開。
てっきり、本作の中で違反語として「床屋」という用語が設定されたのかと思いきや、
現実社会でも放送禁止用語になっているようですね。
「~屋」という呼称は、日銭稼ぎの蔑称なんだとか。
何がいけないのか、いまだに良く分かりません。
差別って、差別を定義づけするところから始まる場合も多々ありますよね・・・・・。

この話から後半は、一気にテーマが重くなっていきます。
後半は、茨城県立図書館での県展受賞作の展示を巡って
メディア良化委員会や、その取り巻き組織、そして「無抵抗者の会」と名乗る暴力反対派と
図書特殊部隊の戦闘を描きます。

保身第一の図書館長に、上手く取り入った「無抵抗者の会」と、
その危ない関係を利用して横暴を究める検閲側の勢力たち。
図書館戦争という架空の舞台を通して描くことでカリカチュアライズされていますが、
現実社会もこんなもんなんだろうなぁと思います。

茨城県が舞台になっており、行政側の人物の受け身姿勢な感じとか、
県民・市民を名乗る横暴な人たちがたくさん登場しますが、
茨城県民からクレーム来ないかしら?と心配になる描き方でした。
たまたま関東近辺を舞台に選んだというだけ?それとも県民性とか反映されてるのかしら?
ちょっと気になるわー。




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