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『鉄の骨』
- 2020/12/18(Fri) -
池井戸潤 『鉄の骨』(講談社文庫)、読了。

文庫本で600頁オーバー。
ずっと積読でしたが、仕事のやる気が超減退しているので、手に取ってしまいました(苦笑)。

いやー、もう、1日で一気読みでしたよ。
池井戸作品って、展開にスピード感があるし、最後にどんでん返しがあるしで、
ボリュームあっても、読む手が止まらないですね。

建設業界を舞台に、公共工事の談合の様子を描いていくのですが、
入社4年目の若手が、「談合課」と呼ばれる業務課に異動することとなり話が始まります。

最初、業務課に主人公含めて4人(課長、先輩、主人公、事務員)しかいないので、
「いくら中堅とはいえ、こじんまりし過ぎじゃない!?」と思ってしまいました。
が、談合という性質上、秘密保持をするには少数精鋭じゃないと厳しいのかしら。
建設業界って、大学時代の友人で行った人が居ないから、良く分からない世界です。

2000億円規模の地下鉄工事を巡って、大手ゼネコンと、主人公が属する中堅建設会社とで
どこが入札するかという争いになるのですが、そこで各社が頼るのが
「天皇」と呼ばれる、大手ゼネコンの顧問を務める人物。
この人物のもとに、各社の役員クラスが日参して情報収集と自社PRに努めるのですが、
談合って、こんな感じで進むんですかね?

正直、大手ゼネコンで談合担当の役員が、皆、自分勝手でプライドだけは高く
しかし大局観も戦略もなにもなしに天皇に頼りっぱなしで、
よくぞまぁ、こんな程度の人物力で役員になれたな・・・・という感じです。

よっぽど4年目の主人公の方が、自分の考え方を持っているというか、
建設業界というものに対して、青臭くても、自分なりの思いを描いているなと思いました。

主人公の恋人はメガバンク勤務で、主人公が絡む談合に関して、
ある種の情報を得られる立場に居るのですが、
協力するでもなく、けん制するでもなく、中途半端な立ち位置に描いたことが
逆に談合の面白さを引き立たせていたように思います。
この恋人が、変に談合に情報提供をしたり、関わったりしてくると、
リアリティのない単なるエンタメ小説になってしまった気がします。

絶妙な立ち位置で描きつつも、ただ、この恋人と銀行の先輩の恋愛もどきの関係は、
あんまり共感できませんでした。
迷っているのに呼ばれたらホイホイ出ていくのは、不誠実じゃないかと。
ま、でも、談合小説の味付けだと思えば、仕方がないのかな。

最後、入札の日に起こることは、ある程度予想してはいたものの、
その行動をとると、業界内で村八分にされるのじゃないか、そこはどうするのだという疑念で
読み進めていたところ、「まさか、そんなところまで考えられていたなんて!」という展開で、
やっぱり、池井戸作品のどんでん返しは面白いなぁと素直に思えました。

600頁を使って描くだけの意味がある業界の話だったなと思います。




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