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『ぼくたちの家族』
- 2020/12/03(Thu) -
早見和真 『ぼくたちの家族』(幻冬舎文庫)、読了。

著者名も作品名も知らなかったのですが、なんとなくブックオフで見つけて買ってきた本。
積読の山の一番上にあったので手に取りました。

ところが、偶然にも内容は、母親が脳腫瘍になり正しい認知ができなくなるという病気になり
家族が闘病で奮闘するというものでした。
認知症ではないものの、認知困難が進行していくという意味では同じような状態であり
図らずも立て続けにそういう作品を読むことになりました。

大きな枠組身の違いは、以下の3つかなと思いました。
・病気になるのが男か、女か
・その夫婦の生活が裕福(安定している)か貧乏(破綻寸前)か
・その夫婦の子供たちが女ばかりか、男ばかりか
この3つの違いだけで、認知症闘病モノと分かっていても、結構受ける印象が違ってて、
立て続けに読んだ飽きは感じられませんでした。
むしろ、比較文化論的に非常に興味深く読みました。

夫がボケると妻は必死に自宅で介護しようとし、妻がボケると夫は必死に医者に駆け込む。
絶望の淵で裕福な者は「死なないで」と願い、貧乏な者は「いっそ死んでくれ」と願う。
三姉妹は如何に日々の暮らしを円滑に回すかを考え、
兄弟は課題をひとつひとつ潰していこうとする。

本作においては、この息子兄弟の特に弟のキャラクターが秀逸でした。
軽佻浮薄な印象を受けますが、意外とモノゴトの本質を見抜いていたり、
余命何日という絶望を突き付けられても受け止めて次の行動を考える忍耐力があったり。

母親が意味不明の言葉を口走り始めたと思ったら、急転直下の余命数日宣言、
それを自己破産寸前の父親と嫁に責められてばかりの兄だけで受け止めてたら、
それこそお通夜のように真っ暗な物語になっていたと思います。
そこに月光のような光を差し込む弟は、なかなかの大人物だと思いました。

あえて冗談を言う、あえて明るくふるまう、あえて母の妄言につきあってあげる、
これは根性が座ってなくてはできない芸当だと思います。
そんな弟君は、最後、報われるようなエンディングになっていて、良かったねと素直に思いました。

バブル末期に背伸びしてマイホームを買ってしまったばっかりに破産寸前の中年夫婦。
自己破産って、事業に失敗したとかいう分かり易い理由以外に、
どんな経過を経てそこに至ってしまうんだろう?という疑問にも、あぁ、例えばこういうことなのか・・・・と
なんだか変に納得してしまう物語でした。

バブル末期に家を買うという運の悪さもあるのですが、
それ以上に、夫婦の金銭感覚のルーズさとか、状況把握能力の低さとか、将来展望の根拠のない楽観とか
人間側にやっぱり理由があるんだなということが良く分かりました。

兄も、結婚数年目で妻が第一子を妊娠中という幸せの絶頂のように見える中で、
妻が両親を軽蔑しているという事実を見ないようにしてきたために
この困難期にきて綻びが一気に顕在化するという苦しみを味わいます。
弱音吐きまくりの父親と違って、兄は自分で解決しようと努力しますが、
弟の手回しの良さとか、時には本質をズバッと指摘してくるところなどに
助けられてたんじゃなのかなと思います。

脳の病気のために本音が素直に出てくるようになった母親は、
夫への不満がダダ洩れになってしまいますが、
ふとした拍子に幸せそうな表情を見せたりするところが
これまたホッとさせてくれるところでもあり、ずっと緊張感の続く闘病記でなかったところが
うまいなぁと感じました。

著者については、本当に何も知らない状態だったのですが
他の作品も読んでみたいなと思います。




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